Uneasiness④-1


~Rui~

司がNYに戻ってから平穏な日々が過ぎ、牧野の高校生活も後少しで終る

○○大学経済学部特待生ほぼ確実と言われていた牧野は、やはり見事、合格した

俺もプロジェクトを1つ終え、一応肩書きが専務になる
たった1つのプロジェクトで専務なんて…
やっぱりジュニアって事だよね

父さんは肩書きがあった方が何かと便利だからと言ってたけど、まだまだその肩書きを貰える程実力がない
ジュニアじゃなく、自分自身でみんなに認めてもらわないと…

女関係のゴシップは相変わらずだけど、NYで司はどんどん実績を上げている

もし、もしも司の記憶が戻ったら…

俺は司に負けている訳にはいかない

「花沢類!どうしたの?ボ~としちゃって」
「牧野があと少しで非常階段に来る事もなくなるんだなぁ~って」
「花沢類…」

牧野の手を取り、薬指に嵌められている指輪を触りながら

「牧野、絶対外さないでね!大学行く時は必ずだよ」

牧野の誕生日に、牧野の華奢な手に合うように、少し小ぶりのアクアマリンの横にダイヤがついている可愛らしい感じの指輪をあげた

総二郎達が言うように、牧野はホントキレイになった
俺と付き合っているのは、英徳高校では殆どのヤツが知っているけど
英徳大学では、カフェに牧野が来るとコクって来るヤツが後を絶たない

牧野は

「あんまり見ない顔だから、気楽にナンパって感じなんだよ」

って全く自分がもてると気がついてない

こんなんで他の大学に行ったら…
やっぱり男よけは絶対に必要だね
まったく牧野は心配ばかりかけさせるんだから…


~Tsukushi~

あたしの高校生活も今日で終わる
思い起こせば…

な~んてシリアスに語れるものじゃない!

断言出来る
あたしの波瀾万丈な高校生活は、絶対に誰も味わえない!

おそらくこれから始まるプロムでも、誰かさん達のせいで注目され、陰口をたたかれ、心から楽しめる事はないだろう
そもそもあたしがドレスを来て、小さいながらも社交界って言われるプロムに出る事自体、間違ってると思う

出来れば出たくない…

でもこの日の為に花沢類が用意してくれたドレスや靴が…

「勿体ない」

じゃなくて…

エッ!?

「クククッ、牧野…全部声に出てるよ」
「は、花沢類///」

花沢類はあたしを上から下まで見ると

「誰にも見せたくないな、牧野…すっごくキレイだ」

と言ってキスをし、抱き締めてくれた


卒業式の後、桜子と滋さんに拉致られるようにエステに連れて行かれ、メイクをしてもらい、ドレスを着せられ

今、花沢類に抱き締められている

「せっかく花沢類が選んでくれたドレスなのに、あたし…こういうの似合わなくてごめんね…」
「ククッ、牧野はホント自分の事が解ってないね」
「エッ!?」
「クククッ、そろそろ行きますか」

花沢類に手を引かれ、会場へと入っていった