心の扉⑦-3


「ねぇ~牧野」

ここって確か…
どういう事?
まさかまた4人で話すつもりじゃないよね

「花沢類、そっちのエレベーターじゃなくて、こっちだよ」
「どこ行くの?」
「花沢類が乗ろうとしたエレベーターはVIP階専用でみずきさんの家に行けるやつ。あたしの家はこっちのエレベーター。はい、乗って」

牧野もこのマンションに?
何だか偶然が重なりすぎてる気がするんだけど

「司が用意したの、このマンション」
「違うよ、楓社長が用意してくれたの。どうぞ上がって。花沢類はミルクティーでいいよね」

あの司の母ちゃんが?

司は何にも言って来ないし、牧野が帰国したのも、あきらや総二郎にも伝えてなかったって事は、やっぱり何かあるみだね

「牧野、家に帰っても仕事ばかりしてるの?そんなに花沢物産って仕事大変なんだ、クスッ」
「ハハハッ、散らかってるよね。ほら花沢類のパーティーがあるから色々と忙しくて…あっ、まだ言ってなかったね」
「なにが?」
「婚約おめでとう、花沢類…」

全然めでくないんだけど
それに牧野から聞きたいのはそんな事じゃないから

「パーティーには司と出るの?」
「ううん、川島部長と…」
「ふ~ん、よくあの司が納得したね。もしかして牧野が花沢物産に入った事もだけど何かあるの?」

ただ単に司の嫌がらせかもね
牧野の事になると司の野生の勘は鋭いから、クスッ
俺がホントに牧野を諦めたのか試してるのかも

「あ、あのね、花沢類」

諦めたはずなのに、こうして牧野が目の前にいると気持ちが揺らぐ
さっきもずっと我慢してたのに、牧野の真っ赤な顔を見たら思わず抱きしめてた

「言いにくい事?でもさ、司を追ってNYに行った牧野が、五年後に一人で日本にいるなんて想像すら出来なかったから、少しくらいヒントをくれてもいいんじゃない?」

そうやって不安そうな、泣き出しそうな牧野を見るとまた抱きしめたくなる

「そうだよね。いつまでも隠し通せる事じゃないから…え~と、どこから話せばいいかな、ハハハッ」
「牧野、泣くか笑うかどっちかにしな」
「あっ…」