はぁ~
もういつになったら、解放してくれるのよ
たかが秘書ごときに、そんな集まらなくたっていいじゃない!
挨拶する人は、あたしが廻るっつ~の!
「お話し中のとこ、失礼致します。牧野さん少し宜しいですか」
エッ!?
西田さん…
「あっ、はい。申し訳ございません。失礼致します」
何かあったのかな?
もしかして、道明寺が何かやらかしたとか
滋さんが隣にいるから、大丈夫だと思ってたのに
「牧野さん、少し休憩して下さい」
ヘッ!?
「パーティーでは上手くかわしながら必要性のある人物にだけきちんと挨拶を済ませるのが基本です。道明寺財閥というだけで人が群がりますから」
そうだよね、いちいち全員に挨拶してたら、重要な方を見過ごしちゃうかもしれない
「はい、解りました」
「ですが、今日は特別でしたから仕方がないでしょう。こちらの飲み物でも飲んで少し休んで下さい」
「はい、ありがとうございます」
西田さんも忙しいのに、あたしにまで気を使って…
今までパーティーはすべて裏方だったから、表舞台は初めてで…
西田さんを見習らなくっちゃいけない
私はこの世界でやって行くしかないんだから…
「ま~きの」
エッ!?
「クククッ、こっちだよ」
花沢類…
仮面を被らなきゃ…
「花沢専務、昨日は道明寺を出迎えて頂いたにもかかわらず早々に大変失礼致しました」
ふ~ん
やっぱり仕事口調なんだ
「司なんて待ってないよ、牧野に会いたかったから空港に行っただけ」
クククッ
こういう風に言うと以前の牧野なら、赤くなって、いっぱいいっぱいになっちゃうのにね
「わざわざありがとうございます。フランスでご活躍とお聞きしましたが、お忙しい中、本日は花沢社長とお越し頂けて光栄でございます」
今の牧野、ホント牧野らしくないよね
顔色一つ変えずに、淡々と敬語つかっちゃってさ
「牧野は何してたの?司とNYにいたんでしょ」
クククッ
ピクリともしないし、なんか不自然でしょ
「はい、楓社長の元で色々と勉強させて頂いております」
「ねぇ~牧野、普段通りに喋れないの?クククッ、それももしかして司の母ちゃんから教わったの?」
「仕事中ですので、誰が見ているか解りませんから」
牧野と仲がいいとこ見られるなら、俺は嬉しいけどね
「じゃ~プライベートの時は普通にしてくれるんだ。牧野、明日時間ある?フランスに帰るから見送りに来て。クククッ、もちろんプライベートで」
「申し訳ございません。あいにく仕事で時間が作れません」
クククッ、即答ね
別にいいけど
「ふ~ん、司に頼んでみるからいいよ」
もしかして思いっきり避けてる?
今だって、この場を離れたくて仕方ないみたいだね
でも悪いけど
ずっと待ってたんだ、牧野に会えるのを
簡単に逃がさないよ
「牧野」
エッ!?
は、花沢類…
「牧野変わらないね、この香りも抱き心地も」
ダ、ダメだよ、こんな所で…
「は、花沢専務、離して下さい」
「ヤダ」
はぁ~
花沢類こそ、そういうマイペースなトコ、ちっとも変わらないよ
「ちょっと度がすぎていませんか、花沢専務」
「牧野がいけないんだよ、そんな態度だから」
あっ…
んんん…うん…んん
ダ…ダメ…花沢類…
んん…
「クククッ、唇も変わらない」
花沢類…
ハッ!
「は、花沢専務、二度とこのような事はしないで下さい。失礼致します」
はぁ~もう
ど、どうしよう…胸がドキドキしちゃって
うわぁ!
「あの~支社長の秘書の方てすよね?」
「あっ、はい」
い、いけない
こんな事で動揺している場合じゃない
仕事に集中しなきゃ
でも…
花沢類のキスも全然変わらないね
「おい、類!大河原捕まったぜ」
「ん、行く」
「なぁ~何かいい事でもあったのか、類」
「何で?」
「さっきまでムッとしてたのに、何か機嫌よくね?」
クククッ
さすが総二郎、そういう事には敏感だよね
「さっき牧野と会ったから」
「はぁ!?何で呼ばねぇ~んだよ」
言うわけないじゃん
せっかく牧野と二人きりだったんだから
「直ぐ行っちゃったから」
「で、何か話したのか?また例の口調だったのかよ」
「プライベートは普通にするみたいだよ、多分」
「まったくわけ解んねぇ~な、牧野のヤツ」
クククッ
ホントだね
でもさっきキスした後、少しだけ昔の牧野の面影が見えたんだけど
「おっ、類、どこ行ってたんだよ」
「バルコニー」
ふ~ん
大河原、普通じゃん
もっとぎこちないかと思ってたけど
何か知ってそうだからね、あんた