代償の果に⑧-2


ホント牧野って鈍感だよね
司公認の時間が後数時間しかないんだから、他の人と一緒に過ごす訳ないでしょ
でも牧野の勘違いで、すんなり部屋に入れてたから良かったけどね、クスッ

「ごめん、お待たせ。花沢類と二人だからついでに化粧も落としちゃった、ハハハッ」

っていう事は、普通でいてくれるんだよね
嬉しいよ、牧野

「誰が来たのか解らなかった、クスッ」
「は、花沢類!それって酷くない」
「クククッ、その方が牧野らしくて可愛い」

謝ったり、怒ったり、照れたり…昔の牧野のままだね

「こ、このお料理、美味しそう!すっごくお腹空いちゃったから早く食べよ、花沢類」

そうやって直ぐ誤魔化すトコも変わってないね、クスッ

「あい」
「え~と、花沢類が持って来てくれたワインだけど、改めて支社長就任おめでとう!それと今日はお疲れ様でした」
「クスッ、牧野もお疲れ様。今日は側にいてくれて、ありがと。嬉しかったよ」
「は、花沢類…その天使の微笑みは反則だよ///」

牧野、そんな初めからグビグビ飲んだら、せっかくの時間が牧野の寝顔を見る羽目になっちゃうでしょ、クスッ

「このワイン、すっごく美味しい!」
「クククッ、まずはお腹に何か入れないとね。酔っぱらって寝ちゃったら、その後どうなるか知らないよ、クスッ」
「も、もう、なに言ってるのよ、花沢類は…うわぁ~すっごく美味しい!花沢類も食べてみて」

牧野って昔から食事してる時が一番幸せな顔してるよ、クスッ


あたしがNYに行くって決心してから、まさかまた花沢類とこんな風に過ごせるなんて、思ってもみなかった

まるで葉山の別荘で食事した時みたい
天使の微笑みの花沢類がいて、素直なあたしがいて…
心がホッとするっていうか、自然で安心する
フフッ、でも食事が高級料理っていうトコは全然違ってるけどね

「牧野、さっきから一人でニヤニヤして気持ち悪い」
「なっ、き、気持ち悪いって酷くない?せっかく楽しんでるのにさ!フフッ、そんな事言うなら、今から秘書バージョンに戻ろうかな、花沢支社長」

いつも花沢類にやられてばっかりだから、今日は仕返ししくちゃね!

「クククッ、牧野そんなに俺にキスしてもらいたいんだ」

あっ、そうだった
秘書バージョンになると、もれなく花沢類のキスが待ってるんだっけ

でも…
してもいいんだけどな…キス

ダァ~!
あたしったら何考えてんだか///

「わ、解った!やっぱり普通にします///」

ヘッ!?

んんん…

「さっき支社長って呼んだからね、クスッ。キスしたかったら何回でも呼んでいいよ」

も、もう///

はぁ~
やっぱり花沢類には敵わないみたい

「後数時間は絶対に言わないから!」
「ククッ、あい」

後…数時間しかない
こうやってキスする事も、花沢類が天使の微笑みをしながら、あたしの頭を撫でる事も…
花沢類の傍にいる事すら、後数時間しか出来ない

「牧野どうしたの?お腹がいっぱになったから眠くなっちゃったとか、クスッ」

ハッ、いけない…
せっかく花沢類と一緒にいられるのに

「フフッ、花沢類じゃないんだから直ぐ眠くならないよ」
「そう言えば、よく非常階段で牧野に寄りかかって寝てたよね。今は眠たくても寝られないけど。牧野、ソファーに座ろ」
「うん!あっ、花沢類、ワイン持って来て」
「あい」

昨日はゆっくりしてる暇がなかったから、ここの夜景がこんなにキレイだなんて気がつかなかったな

「キレイだね、花沢類。NYに行ってから、仕事で色々なホテルに泊まったのに、こんな風に窓の外って全然見なかったな」

忙しかったのもあるけど、ゆっくり景色を見る事すら避けていたのかもしれない

「俺は必ず見てたけど。いつも牧野を思ってね」

も、もう花沢類ったら///

「は、花沢類、ワイン飲もう。ほらこっち座って」

夜景を見ながらそんな事言われたら、あたし…
って花沢類、何してるの!?

「あ、あのさ花沢類、眠いんだったら…」
「ダメ?」

いや、ダメじゃないけど…

「牧野の膝枕、久しぶり。何だかすっごく落ち着く」

も、もう、花沢類ったら///
でも何だか昔に戻ったみたいで心地いいかも

「ホント懐かしいよね。花沢類ったら、いつも最初は寄りかかって寝てるのに、首が痛いから膝枕がいいって、何だか子供みたいだったよね」

膝枕して花沢類の柔らかい髪を撫でるのがすごく好きだったな
フフッ、それと寝顔を見るのもね

「牧野に膝枕してもらえるなら、子供にでも何でもなるよ、クスッ」