心の扉④-3


「やっと元気な牧野さんに戻ったみたいだね」

そりゃ~こんな美味しい料理を食べて元気にならないわけがない

「すみません…気を使って頂いて。こんなステキなお店に連れてきて下さってありがとうございます」
「いやいや、牧野さんに断られないように先手を打っただけだから」

ヘッ?
先手を打ったって…なに!?
あっ、そういえばお願いしたい事があるって言ってたっけ

「川島部長、一体何をさせるつもりですか?」
「ハハハッ、そんな睨まなくても」

はぁ~
タダより高いものはないって昔から言うもんね

「こんな美味しい料理を頂いて今更断られないですから、どうぞ遠慮せずおっしゃって下さい」
「それじゃ~お言葉に甘えて。支社長の就任パーティーなんだけどね」

花沢類の就任パーティー?
まさか部長が欠席するなんて言わないよね!?
そ、それは困るから…

「やっぱり一緒に出てくれないかな?もちろんパートナーとして」

えっ!?
あっ…
い、いや…それも困る
ヤダ…どうしょう

「で、でも自社のパーティーだからパートナーはいらないって…」
「親父…川島常務がうるさくってね。各界から色々な人脈が集まるから君に来てもらわないと。得意分野だよね」

確かにそうだけど…
あらゆる分野の人の顔、名前はNYで散々叩き込まれたから
おそらくNYで実際に会った事がある人もパーティーに来ると思う
でも会ったと言っても楓社長や西田さんの後ろで見ただけなんだけどね

っていうか、そんな事より問題はパーティーに花沢類がいるって事で…花沢類の就任パーティーなんだからいるのは当たり前なんだけど

「あの…どうしても出なくてはいけませんか?」

きっと道明寺も美作さん、西門さんもくるだろうし
出来ればもう少し気持ちが落ち着いてからと思ってて…

でも本当は…
見たくないの
花沢類の婚約発表なんて

「あれ?さっき断れないって言ってなかったっけ?」

仕事だから…出ない訳にはいかない

「解りました…私で少しでもお役に立てるのであれば」
「ありがとう。それじゃ~食後のデザートを食べて、話もまとまった事だし行こうか。車に招待客リストがあるから渡しておくね」
「はい」

大勢の中で花沢類や道明寺達に会う確率は小さいと思う

それに…
婚約発表の時は席を外せばいいだけだから

「さぁ~乗って」
「いえ、私は電車で帰りますので」

だって…
あんな所に住んでるなんて出来れば知られたくない

「さっき言ったよね。リストは車にあるからって」
「それではリストだけ頂いて…あっ…」
「牧野さんの家に向かって」
「はい、畏まりました」

乗っちゃったよ…
っていうか、知ってるの?
あたしが住んでる所

「はい、これがリスト。10分くらいで着くから、詳しい話は明日、会社でしよう」
「はい」

やっぱり知ってるみたい
でも何にも聞かれない
あっ、そうか
前に友達の家だって言ったからかも
それに花沢物産に勤めてる人ってセレブが多いから、気にならないのかもしれない

「すごい数の招待客だよね。この中から当日、重要人物だけを探すなんて一人じゃ出来ないよ」
「フフッ、それで助っ人が必要だったんですね」
「ハハハッ、よろしく頼むよ」

ホントすごい数だよね
まずは部長に関係がある人物をピックアップしてから、全てのデーターを見直そう
いつ誰に話しかけられるが解らないからね
でも結構覚えている人ばかりだから大丈夫かな
あっ、やっぱり道明寺が来るのか
それに美作さんも西門さんも出席
まぁ~
親友の就任&婚約発表だもん来ないわけないか

「牧野さん、着いたよ」
「はい。あの今日はありがとうございました」
「いや、こっちこそ無理させるけど…あれ?支社長とみずきがどうして…」

花沢類とみずき!?
確か…花沢類の婚約者の人がみずきさんだったよね?
あ~そっか
花沢類の婚約者と川島部長は幼なじみだって言ってたっけ
呼び捨ては当たり前か

「支社長と婚約者の方がどうしたんですか?」
「ほらそこ、見てごらん」

えっ…
な、何で花沢類があたしの住んでるマンションに!?

「牧野さん、同じマンションに住んでるみたいだね」

そんなはずはない
だって花沢物産の関係者は住んでないって…
そっか…楓社長がマンションを購入した時はまだ婚約はしてなかったから解らなかったのかも
ま、まさかココが新居なんて事はないよね!?
はぁ~
ホントあたしってどこまでついてないんだろう