代償の果てに⑥-2


「花沢様、こちらで如何でしょう?」
「うん、さすがだね。でもこれはいいや、あるから」
「フフッ、畏まりました。それでは直ぐにご用意して、お車にお運び致しますので」

ブルルル
ブルルル

あきらか…
せっかく牧野といるのに
でもこっちも大事かな

『類、テレビ見たぜ。相変わらず牧野に関してはよく動くな』
『あきら、三条捕まった?』
『あぁ、あれから連絡しても出ねぇ~し、さっき三条邸に行って、俺んちに引っ張って来た。今から邸来れるか?』

あれだけ協力的だったのに、急に逃げるなんて三条らしくないよね
何か知られたくない事でもあったの?
それとも司に圧力かけられた…って事はないか

『うん、牧野送ったら行く』
『何だ、まだ一緒にいるんなら、また今度でもいいぜ』
『別にいいよ、牧野も疲れてるだろうから、早く休みたいでしょ』

空港に到着したら、俺がいて気が抜けない状態だったからね、クスッ

『あぁ、解った。じゃ~待ってっから』

ピッ!

三条、素直に話してくれるといいけどね

「花沢支社長、あの…ドレスを作って頂いて、とても嬉しいのですが、このような高価な物を頂く訳にはいきません」

相変わらずだね、牧野

「ふ~ん、じゃ~パーティーの時、俺が着るしかないか」
「ハッ?そ、そんな何を言ってるんですか!」
「だって勿体ないでしょ。クククッ、でも着れないよね、牧野に合わせて作ったんだから」
「わ、解りました…でも頂く訳にはいかないので、支払は私が致します」

そっか、司の秘書だからこのドレスが買えるくらい、いっぱい給料貰ってるよね

「残念だったね、牧野。もう支払い済みだから、じゃ~その代わり今度、牧野が夕食奢って、クスッ。今日は疲れたでしょ、送るよ、行こ」


今日、日本に着いてから、あたしずっと花沢類に振り回されぱなしっていうか、花沢類のペースにまんまと嵌まってる気がするんだけど…

今だって送るって言いながら、また何処かに…
も、もしやマンションに上がり込んだりしないよね!?
そんな事されたら、道明寺に何て言われるか…

「何か俺って信用されてないみたいだね、クスッ。大丈夫、ちゃんとマンションに向かってるし、牧野降ろしたら帰るから」

ヘッ!?
あたし口に出してないよね?
大丈夫、大丈夫!
NYで散々訓練してきたんだから
でも、だったら何で解っちゃったのかな…

「クククッ、そんな疑いの目で俺をジッと見てたら直ぐわかるでしょ」

だ、だって…このまますんなりなんて、パターン的にあり得ないかなって

「あの、決してそのような事は…お疲れのところ、わざわざお送り下さって申し訳ございません」

花沢類だってフランスから帰国して、明日からも色々忙しいだろうし、疲れてるだろうから早く帰りたいよね
ホッとしてるんだけど、何だか寂しい…
もっと…もっと花沢類と一緒にいたい

「牧野が傍にいてくれてるから、疲れなんかまったく感じないけど」

ま、まったく///
花沢類といい、道明寺といい、何でこうも恥ずかしい言葉を簡単に口に出せるかな…

「ま~きの」

エッ?

チュッ!

ヘッ!?

「クククッ、着いたよ」

あっ、ホントだ…って
もう花沢類は!

「俺が部屋まで運ぶのは嫌だろうから、頼んでおいたから」
「す、すみません。有難うございます」
「じゃ~ね、牧野」

あっ、待って
あたしちゃんとお礼言ってない

「花沢支社長!あの…今日は有難うございました。パーティーでは足を引っ張る事のないように精一杯努めさせて頂きます」

あっ…
んんん…ん…

「夕食、牧野が奢るの、忘れないでね、クスッ。じゃ~またね」

も、もう!
花沢類ったら、最後の最後まで!

「ま、牧野様、お荷物をお運び致します」
「あっ、はい…すみません。ありがとうございます」

ってヤダ…
管理人さん、顔が赤い
見られてたって事だよね
もうヤダ、恥ずかしい



クククッ、牧野ってホント可愛いよね

ホントはもっと一緒にいたかったけど、これから忙しくなりそうだから、あまり時間も取れないし、少しでも情報が欲しいからね
今度こそ牧野を手離さない為に…

「あきら、ごめん、遅くなった。三条も急に悪かったね」
「いいえ、花沢さんこそお疲れなんじゃないですか?」

あれ?
いつもと全然変わらないけど…
ククッ、三条は隠すのが上手いからね

「フランスにいる頃の方がハードだったから全然。それより何か解ったの?」
「それが…すみません。あの日、マンションの駐車場に張り込んだんですけど、滋さん現れなくって…何も情報がないんです。花沢さんが帰国するまでに少しでもとは思ったですけど…」

ホントに?
俺に知られたくない事があったのかな

「そっか」
「現れなかったんなら、言ってくれれば無理やり連れて来なかったのに…悪かったな、桜子」
「いいえ…ただ…」
「ん?」
「先輩は今でも花沢さんが好きだと思います。だから諦めずにいればきっと…あっ、これは私の勘ですけど…」

クククッ、やっはり何か知ってるみたいだね
でも言わないって三条が判断したって事は…

「ありがと」

これからが本番だから
覚悟してて、牧野
ククッ、司もね