すれ違い 後編1


「類!」

ホント変わらないんだから
久しぶりに会えたのに、少しは駆け出して来るとかすればいいのに
でもそんなトコが類らしいんだけどね

「静、久しぶり」
「本当に久しぶりね、類。フランスに来て半年以上になるのに連絡一つよこさないなんて、随分冷たいのね、類」

司の言う通り、類の携帯はずっと電源が入っていない状態みたいで、いつ掛けても繋がらない
類の秘書の人と連絡をつけてやっと会えたんだけど

「ごめん、色々忙しかったから。静、あそこに入ろ」
「えぇ、ねぇ~類。何だか元気ないわね」
「そう?いつもと変わらないけど」

本当に類ったら
日本に…牧野さんの傍にいた時とは全然違うじゃない

「クスクス、フランスに来てから変わらないって事かしら?」
「静…知ってるの?」
「牧野さんがNYに行った事と、その日に類がフランスへ向かった事はね」

類のその様子からすると、牧野さんを今でも想っているって事よね

「そっか」
「今でも牧野さんが好きなのね、類」
「クククッ、あんな最強の女、忘れられる訳ないでしょ」
「だったら司から奪っちゃえば?」
「静、なに言って…」
「だってNYに牧野さんが行ったからって、結婚した訳じゃないでしょ。だったらチャンスはいくらでもあるわよ」
「牧野は司が好きなのに、今さら邪魔出来ないよ」

まったく牧野さんの傍にいて全然気がつかなかったなんて…
普段は敏感なのに、自分の事となると違うのかしら
司が言うには、牧野さんも類の気持ちに全然気がついてないって言うし…
フフッ、この二人、結構似てるのかもしれない

「あら、そんな事解らないわよ。元は牧野さん、類が好きだったんだから」
「もう一度、俺を好きになってくれる可能性ってあるのかな、クスッ」
「今の類じゃダメね」

だってそうでしょ
牧野さんは類の為に頑張ってるんだから、類もね

「静の言いたい事は解ってるよ」
「じゃ~類、頑張ってみる?」
「クククッ、何もせずにいたら後悔するから、例えムリでももう一度ね。もちろんその前に俺が最強の男にならなきゃいけないけど。ありがと、静」

お互いに想いあってるのだから、私はこれ以上は話さなくても大丈夫よね
司と牧野さんの事は自然と耳に入るかもしれない
でもきっと二人が再び会う時はすべてが上手くいく時だと思ってるから

「類、何だか男らしくなったね。牧野さんのお陰かな」
「静も俺を変えてくれたけど、牧野は…ククッ、特別なんだ」

牧野さんの話をする時の類は本当にいい顔してるね
今日、最初に会った時とはまるっきり違うんだから

「お話し中のとこ大変申し訳ありません。類様、お時間が…」
「解った。静、ごめん。行かなくっちゃ。今日はホントありがと」
「頑張ってね、類」
「あい」