代償の果てに③-3


「支社長、先程楓社長より連絡がございまして、時間を調整して部屋に来るようにとの事です」

チッ!
ババァのヤツ
このクソ忙しい時に呼び出しやがって

「調整出来るのか?」
「はい、次の来客に30分時間が取られていますので、10分程で終わらせて頂ければ」

次の来客は…狸ジジィか
どうせただの挨拶だろ

「解った」

5分で終わらせるつもりが思いの外時間が掛っちまったな
まったく
俺様に挨拶に来たのか、牧野に会いに来たのか
エロオヤジめ、しつこく牧野の事聞きやがって

コンコン

「遅くなりました。このクソ忙しいのに何か重要な用事でも?」
「滋さんから電話が来たわ。結婚式の日取りの事と牧野の事。今日、空港に行かせたみたいだけれど、随分余裕がおありなのね、司さん」

フン
滋のヤツ
余計な事言いやがって

「それが何か?」
「一ヶ月後に日本へ戻って来るそうよ」

一ヶ月…
随分と早え~な
あのプロジェクトじゃ、
人に任せるにしても、三ヶ月は戻らねぇと思ってたのにさすがだな、類

「社長のお考えは?」
「一年後と言いたい所だけれど、そうもいかないでしょう。このままだと毎晩のように滋さんから電話が掛かってきそうですから」

滋の事だから、やりかねねぇ~な
チッ!

「社長と滋でお好きなように。では、次の来客がありますので」

三ヶ月後か、遅くても半年後ってとこだろ
まだババァも納得してねぇ~しな


「花沢専務、機内では少しお休みになられた方が…」
「う~ん、これだけ目を通したらね。それよりちゃんと手配してくれた?」
「はい、その件でしたら明日には確実に」
「ありがと」

夜には司の耳に入るかな
クククッ
でも止められないよね、認める事になるから
色々と体裁が悪いでしょ、司

まずはあの噂を消さなくっちゃね
例えそれが真実ではあっても…

司、俺からの宣戦布告だから
必ず牧野を取り戻すってね


「類のヤツ、だから見送りに来いって言わなかったのか」

出ていなかくて良かったぜ
俺らが写ってたら、意味ねぇ~からな

「類が動けばマスコミも動くって普通解ってんじゃね?さすが牧野だよ」
「ホント先輩って相変わらず鈍感ですよね、撮られていてもちっとも解らないんですから」

花沢さんにキスされた後の先輩を見ると、今でも…って思えるんですけど
それに花沢さんが見えなくなるまで後ろ姿を見送っていたし
でもだったら何故…

「さ~て類も牧野も行っちまった事だし、俺らも帰ろうぜ」
「これから司がどう出るか楽しみだな」

今のままで先輩が幸せなはずはない

「すみません、私ちょっと行くところがあるんで、ここで失礼します」

一体何があったのか
花沢さんが日本に戻るまでの間に、少しでも解るといいのだけれど…


プルルル…ピッ

『はい…えぇ、…そう、解ったわ、ご苦労様』

「フフッ、動き始めたみたいね。西田、最低でも三ヶ月以内に出来るかしら?」
「おそらく大丈夫ではないかと」



何だか朝からザワザワしてる気がするんだけど…

「牧野さん、おはようございます」
「田中さん、おはようございます。昨日は本当にご迷惑お掛けして申し訳ございませんでした」

花沢類を見送った後、急いで会社に戻ったら、今度は楓社長に呼び出されて…
西田さんと共に楓社長と動向して、戻って来たら秘書のノウハウを西田さんに叩き込まされ
そしてその後、誰もいないオフィスで道明寺の今日一日の出来事の把握
明日からのスケジュール管理
ホントすっごく忙しい一日だった

「いいえ、牧野さん大変ですね、こちらの事は気にせずに。でも追い討ちをかけるようですが…今日から一週間、楓社長が日本にいる間、午前中は支社長、午後からは楓社長にとの事です」

ゲゲッ!
い、一週間こんな状態が続くの!?
はぁ~
あたしが未熟なせいだから仕方ないけど…

「はい、解りました」
「それと…一応これに目を通していた方がよろしいかと…」

エッ?
なに、週刊誌!?

ななな…///

「あ、あの田中さん、もしや朝からザワザワしていたのはこれのせいでしょうか…」
「おそらく」

何でこんな写真が…

それにしても上手く撮れてるよね
記事と合わせて見ると、ホント以前から付き合っているようにしか見えない

あの時、突然後ろから花沢類に抱き締められて、ビックリした顔をしているはずなのに…
角度をかえて写すとこんな風になるんだ
キスしてるトコだって一瞬だったのに…
でも記事にあるような間柄ではない

「大丈夫、直ぐ収まりますよ。いつも通りに堂々としていて下さい。さぁ~て牧野さん、今日はどのように支社長を料理致しますか?」

フフッ、田中さんったら

出てしまったものはしょうがない
事実ではないんだし
道明寺が見たら…
知らないはずは…ないよね…