心の扉⑦-1


「牧野さん、どうしたの?」

牧野?
ふ~ん、この人の友達も牧野っていうんだ

「あっ、いいえ…なんでもないです」
「つくしさん、早く座って」

つくし?

「はい…」

牧野…つくし?
まさか…ね

「類さんも早く」

いや、牧野だ
何でこんなとこに牧野がいるの?

「つくしさんとせっかくお友達になれたから、類さんにも会ってもらいたくて、フフッ、呼んじゃった」
「支社長、どうぞお座り下さい」

なんかこの人、見たことがある
確か川島常務の…

「類さん、川島徹さんはもちろんご存知よね」
「川島です。実は結城みずきさんとは幼なじみでして」

別に幼なじみだろうとどうでもいい
そんな事よりどうして花沢物産の部長と牧野が一緒にいるか知りたいんだけど

「そしてこちらは牧野つくしさん。徹さんの秘書をしているのよ。類さん、会社で会った事ないかしら」

司の秘書じゃなく、こいつの秘書?

「牧野」
「あっ、はい。ま、牧野つくしです。これから宜しくお願い致します」

なにその挨拶
知らないフリしろって事?

「つくしさん、そんなにかしこまらないで。今はプライベートなんだから、気楽にしてね」
「みすぎ、それは無理だろ。いきなり支社長の前で普通には出来ないよ。ね、牧野さん」
「えぇ、はい…」

ふ~ん
あくまでも他人のふりね

「私ったら自分の事ばかりで…ごめんなさい、つくしさん」
「そんな謝らないで下さい。きっと直ぐ化けの皮が剥がれちゃうと思うので」
「みずき、ホントに直ぐだと思うよ。僕の秘書になった時、三日とかからず地が出てたからね、ハハハッ」
「か、川島部長!」

牧野とこの人の雰囲気からすると、秘書になって一週間やそこらじゃない気がする
いつから花沢物産に…
っていうより司は、道明寺財閥はどうなってるの?
ホントわけ解んないんだけど

もしかして…
司の母ちゃんの差し金とか
牧野が秘書だと司が働かないから
ん~
あり得る気がするけど、司の事だから返って手放さないように頑張るだろうし

それじゃ~牧野に色々経験させる為に他の会社にいれた
それとも花沢物産へのスパイとして送り込んだとか
でも今のとこ道明寺財閥と被ってるプロジェクトはないはず…

「…さん、類さん。フフフッ、またお仕事の事、考えてたんでしょ。つくしさん、類さんって普段からあまり話をしない人だから、ムスッとして見えるけど気にしないでね」

そんな事、あんたより牧野の方がよく知ってるから

「そういえばこの間、牧野さんも支社長の事、ムスッと」
「あわわわ、川島部長!」

っていうか、随分と仲良く見えるんだけど
さっきからそいつばかり見て、ちっともこっち見ないし
なんかムカつく

「ねぇ~牧野」
「は、はい、何でしょうか」
「司は?一緒に帰国してるの?」

うわ~
な、なにを突然言い出すかな

「ど、道明寺副社長はまだNYにいらっしゃると思います。帰国は支社長のパーティー当日と伺っていますが…」
「牧野さん、道明寺副社長って誰と一緒に帰国するの?」

ウゲッ!
ど、どうしよう…
もう花沢類ったら余計な事を

「さ、さぁ~私より支社長の方が詳しいかと…」
「あぁ、確か支社長と道明寺副社長とは幼なじみでしたね。ん?でも牧野さんよく知ってたね」

へっ?
や、やだ
あたしったら自分で自分の首をしめちゃったよ
あ~もう!
花沢類ったらそんな笑う事ないでしょうが
っていうより、そんな笑ってたらバレちゃうよ

「あの、え~と…こ、高校生の時にF4ってものすごく有名で…天下のF4って言われるくらいですから、ハハハッ」

ま、まずい
今、笑うとこじゃなかった…

「F4って何のことかしら」

あ~みずきさんはずっとフランスにいたから知らないのか

「支社長と道明寺司は知ってるよね。それに茶道の家元の西門総二郎。それと今日、オークションの書類を渡したから知ってるだろ、美作商事の美作あきら。この超スーパージュニアの4人組をflower4って言うんだ。今でもすごく有名なんだよ」

ホントそう
何かある度にマスコミが動く
花沢類の婚約の時だっていち早く雑誌に載ってたし
正式発表するパーティーが近くなったせいか、最近はテレビでも流れてて…

「F4ってすごいメンバーなのね」
「ジュニアってだけじゃなく、みんなイケメンっていうのもね」

揃いも揃ってパーフェクトだからね
花沢類なんて婚約しても人気がおとろえないし

「牧野」
「は、はい!」

ま、また今後は何を…

「今日、あきらのトコに行かなかった?」

エッ!?
な、なんで知ってるの?

「は、はい…み、美作商事に行きましたけど…」
「俺も総二郎も牧野に似た人を見かけたからさ、クスッ」

あ~もうダメだ
二人の目線が…

「牧野さん、もしかして西門総二郎と知り合いなの?それに支社長とも…」 

牧野みたいに鈍感なら気がつかなかったかもしれないけど、この二人は頭がいいからね
っていうよりもう普通の人なら気がつくから
さぁ~て、牧野
これでも隠し続けるかのな、クスッ

「あ、あの実は…」
「あっ、そういえば牧野さんって英徳卒業だったっけ。それでか…って事は道明寺司と美作あきらとも知り合いなの?」

クククッ
どんどんバレていっちゃうね、牧野

「し、知り合いというか、英徳にいる時、たまたまちょっとお世話になっただけで…あ、あのまさか一般庶民の私を支社長が覚えているとは思ってなくて…」

ふ~ん
ちょっとお世話にか
俺達の方が牧野にすごくお世話なったのにね
特に司はね

「クスッ、一般庶民か。懐かしいね、牧野」
「そ、そうですね…ハハハッ」
「類さんとつくしさんが知り合いだったなんて嬉しいわ。類さんったら最初に言って下さればいいのに。つくしさんもよ」
「す、すみません…みずきさん」

別にあんたに言う必要はないでしょ
俺と牧野の関係なんて

「ねぇ~牧野さん。NYにいたのはもしかして道明寺司と何か関係あるの?」

ふ~ん
この人、結構勘が鋭いじゃん

「か、関係って…あの、そんな親しくは…」
「さっき支社長が牧野さんに道明寺司の事を聞いたって事は、向こうで会ったりしてたんでしょ?」

クククッ、ずっとね
なんせ司の婚約者だから、牧野は

「え、え~と、勉強が大変で忙しかったので、ちょっとお見かけしたくらいです…」
「そうなんだ」

牧野、どうするの
そんな事言って、後で確実にバレるでしょ

「牧野はいつ日本へ戻って来たの」
「い、1ヶ月前くらいです」
「牧野が花沢物産にいる事、司は知ってるの?」
「ど、どうでしょうか。私には…」

ホント牧野は…
いつまでそんな態度ってるの 

「つくしさんは道明寺司さんと特に親しいのかしら」
「いいえ、そんな事は…」

この人達の前じゃ何にも話してくれなそうだね

「悪いけど牧野と大事な話があるから。牧野、行こ」
「エッ!?あっ…」
「類さん!?」

何で一人で帰国したの
司とはどうなってるの
何で花沢物産に!?
聞きたい事は沢山ある

でもホントは…
今すぐ牧野を思いきり抱きしめたい