心の扉⑩-5


牧野、ドレス着てくれたんだ

すっごく似合ってるね

もしかしたら他の人から貰ったのを着るんじゃないかって思ってた

司やあの川島っていう人がプレゼントしてそうだったからね


「あの・・・類さん」

「ん?どうしたの」

「ごめんなさい・・・ちょっと具合が悪くて」


確かに顔色が悪いかも


「無理しなくていいよ。彼女、家まで送って」

「で、でも・・・」

「気にしなくて大丈夫だから」

「類さんの大事な日なのに・・・ごめんなさい」


婚約発表もしないし、いない方があんたの事聞かれなくて返って楽だからね


「医者の手配をしておくから、早く帰って休んで」

「はい・・・類さん、ありがとう。それと本当にごめんなさい」


聞き飽きたって言って、思わず頭をクシャっとしたくなる

でもあんたは牧野じゃないから


牧野を諦めてた頃はあんたのそういう牧野を思い出させるとこが良かったのにね

でもやっぱり本物には勝てないよね


「主役がいつまで控え室にいるんだ!ん?類、みずきさんはどうしたんだ」

「具合が悪いので家に帰らせました」

「いくら婚約発表をしないとはいえ、こんな大事な日に!」

「別に大丈夫でしょ。じゃ、行くから」


あんたには悪いけど、いい理由ができたかも

珍しく父さん、結構怒ってる感じだったからね

でもこんな理由だけじゃ婚約破棄はできないか


ククッ

会場に入って早々、そんな睨まなくてもいいんじゃない、司

今度ちゃんと話をするからさ

まずは一応、挨拶回りをしなきゃいけないからね