あきらの悲劇 Part1②


「あら、つくしちゃん、久しぶりねぇ~フフッ♪」
「ご無沙汰してます」

つ~か、こんな玄関先で、ケーキの話なんか始めないでくれよ

「お袋、悪いけど牧野と大事な話があるから」
「あきら君、そんな怖い顔して、だからつくしちゃんみたいな可愛い彼女が出来ないんじゃない」
「プッ!」

チッ!
牧野、笑ってんじゃねぇ~よ、まったく…

「そこ座って。まずはこれどういう事?」
「ハハハッ、怒ってるよね…勝手にごめんなさい…」

類には花沢物産に入るように散々言われていたけど、どうしても仕事とプライベートを分けたかったから、バレないように、普通の学生みたいに、就職試験を受けた

ふ~ん…

って、別に花沢物産に入ったからって、仕事とプライベート分ければいい事だろ

「それで何で美作商事なんだよ…他にも沢山お前の入れる会社はあるだろ」
「そうなんだけどね、全然関係ない会社に入ったら、花沢類、買収しちゃったりしそうじゃない?」

まぁ~やりそうだよな
類がそこの社長になって、牧野を秘書にすればいいんだから

「そうなると道明寺財閥は花沢類が嫌がるだろうし、美作さんのトコかなって」

あ~なるほど…
それはいい考え…じゃねぇ~よ!

「類は知ってんのかよ」
「だからバレないようにしたって言ったでしょ。こんなに早く美作さんが気付くとは思わなかったよ」

まぁ~新入社員なんか興味ないからな
でもよ、お前の経歴は目立ちすぎなんだよ

「つ~事は…」
「入社まで花沢類には秘密にしてて、お願い!」

おいおい、マジ入ろうとしてんのかよ

「あきら、なに牧野、邸に連れ込んでんの?」

る、類!

「は、花沢類、ど、どうしてここに?」
「牧野、忘れたの?今日、大学が早く終わるからって言ってたでしょ。迎えに行ったらあきらに連れ去られちゃったから…ん、これ何?」

ゲッ!
や、やばい…

「ふ~ん、あきらのトコで牧野、引き抜いたんだ」
「いや、待て…類、違うんだ」

おい、牧野も何とかしろよ

「何が違うの、あきら。こっちの新入社員リストにも牧野の名前載ってるし」

勘弁してくれよ、類
そんな静かな口調で睨むなよ

「あ、あのね、花沢類。美作さんには関係ないから」
「何で?二人で俺に内緒で決めたんでしょ、入社」

だからそこが違うんだよ
俺だって今日知ったばかりなんだからさ
頼むから牧野、早く暴露しちまえよ
それでお前は花沢物産に入社しろ
これですべて上手くいくんだから

「花沢類、ホント違うの…あたしが勝手に美作さんの会社を受けたの…ごめん」

よしよし
いいぞ、牧野

「そんなに嫌、花沢物産に入るのが」
「そうじゃなくて…自分を試したかったの、花沢物産だと花沢類に甘えちゃうと思うから」

全然OKだろ、いっぱい甘えろって
今まで甘えた事なかったんだから

「花沢類とは一緒に仕事したいと思ってるよ、でもね、その前に色々学んで自分に実力を付けたかったの」

花沢物産だって実力は付くから
お前なら、相当出来る秘書になれるんじゃね

「解ったよ、牧野。でも…」

もちろん花沢物産に入れだよな、類

「あきらの秘書ならいいよ。他はダメ」

はぁ!?
おい、類、なに言ってんだよ!

「ホントに!美作さん、宜しくね」
「まったく、うちの人事、勝手に決めんなよ」
「クククッ、あきら、このリストちゃんと見た?」

あ?
今さらリストなんか…

ゲゲッ!
配属予定が…俺の秘書

「俺のトコに戻るまで、あきら、牧野宜しく。あっ、牧野に惚れちゃダメだよ」

誰が惚れるか!
ちくしょ~
何で俺はいつもこういう役回りなんだよ!
頼むから俺にも平凡な日々を送らせてくれ!