代償の果てに⑩-2


「そもそもお前が俺様より類を好きになるからこんな事になるんだ」
「なっ…そ、それに関しては…本当にごめんなさい…道明寺」
「ふん、まぁ~好きになっちまったもんはしょうがねぇ~な」
「最初から牧野は俺の事好きだったのに、司がちょっかい出すからフラフラしちゃっただけでしょ」

フラフラって…
確かにそう言われれば、そうだったのかも

「チッ、悔しいがそうかもな。俺様がNYに一緒行くぞって散々言っても類、お前から離れたくなくて必死に抵抗してたくらいだからな」

エッ!?
もしかしてその頃からあたしが花沢類を好きだって気づいてたの?
あたし自身、どうしてこんなにNYに行きたくないのか解らなかったのに…

「NYに行ってから数ヶ月、牧野の様子を探らせて確信した。牧野を手に入れてからいつかはこうなる気がしてたんだ…やっぱり類には勝てねぇ~んじゃないかってな」

道明寺…

「だがな、いくら牧野が類を好きだろうが、俺様がそう簡単には渡す訳ねぇ~だろ。特にあの頃の類にはな」

はい!?
ただ単に邪魔する為に、こんな何年も騙してたの?

「そうだね、あの頃は牧野に会う為だけに大学に行ってただけだから。そんな奴に渡したくはないよね」
「自覚してたんなら自業自得ってやつだな」
「でもあの頃は牧野、司の彼女だからさ。やっと牧野の気持ちが解った時には司の企みに嵌った後だったからね」

そ、そうよ
何も始まらない内に道明寺が仕掛けてきたんでしょうが

「ふん、牧野を好きになった時点で俺様が納得いく男になってりゃ~良かった事だろ」
「ふ~ん、だから牧野を隠したんだ。そんな事しなくても牧野と一緒にいられるなら何でもするのにね」

は、花沢類///

「ひ、人が話してやってるのに、なに二人で見つめ合ってんだ!牧野、俺様が直々にお前に説明してやってるんだから、俺様を見ろ!」
「別に道明寺の事見なくても、ちゃんと聞いてるから」
「牧野、てめぇ~」
「クククッ、それで司、俺を納得いく男にする為にわざわざ父さん、花沢社長に会いに行ったの」

花沢社長の所に?
それじゃ~やっぱり花沢社長も最初からずっと…

「あぁ。でもな、俺様もまさか先約がいるとは思わなかったぜ」

せ、先約!?

「司さんの行動は手に取るように解りますから」

か、楓社長!?

「チッ、まぁ~そういう事で俺様が行ったら、ババ…楓社長と類の母ちゃんもいたんだ」

ヘッ!?
お母様も…

「つくしさん、ごめんなさい。あなたの事は楓さんと司さんがいらっしゃる前から知っていたの。類にもやっと心から想える人が出来たのねって喜んでたのよ。その人がつくしさんで本当に良かったわ」

お母様…
あたしなんか、一般庶民で何も取り柄がなくて、反対されてもおかしくないのに
そう言って貰えるなんて本当に嬉しい

「司君が来る前に楓さんからつくしさんを預けて欲しい、自分の手で育ててみたいって言われてね。ククッ、あの楓さんが人を誉めるなんて初めて見たよ」
「バ…楓社長でも人を誉める事があるんですね」
「私に簡単に見破られるようでは、司さんはまだまだでしょうね」

プッ!
そうよねぇ~
大学だってスキップ出来ずに、あたしと一緒に卒業したし
人の名前は覚えないし
やっぱりまずは俺様の性格を直さなきゃ無理かもねぇ~
ハハハッ!

「類も牧野も笑ってんじゃねぇ~!」
「クククッ、自分の出来が悪いからって当たらないでくれない、司」
「んな笑ってると話してやらねぇ~からな」
「プッ…ごめん。道明寺が一生懸命努力してきた事、あたしちゃんと知ってるからさ。機嫌直してね、道明寺」
「ふん、仕方ねぇ~な。でも、まぁ~俺様が言うのもあれだが、花沢社長も楓社長もさすがだつ~か。俺様が話をしなくてももう既にシナリオが出来上がってたんだたよな」

エッ!?
ど、道明寺が企んだ事じゃなかったの?

「司のシナリオじゃ直ぐ見破られちゃうからね、クスッ」
「類、てめぇ~!」
「司さん、確か類さんには簡単に見破られていたでしょう、あなたのシナリオでは」
「チッ!」

クククッ、でも司、演技はすごく上手かったよ
俺も就任パーティーの後まで騙されてたって気がつかなかったからね

「あの…それじゃ~道明寺のあの手紙も楓社長と花沢社長が考えたんですか?」
「いや、あれは俺様が考えた。牧野の事だから俺様が類に何かしでかすんじゃないかと心配して、素直にNYに来るんじゃねぇ~かと思ったからな」
「ふ~ん、司、俺をダシに牧野の事、脅したんだ」
「し、仕方ねぇ~だろ。気づかれないようにNYに連れて来いっつ~指示だったんだからよ。でもな、俺様の広い心で一日デートする時間を与えてやったんだから有り難く思え」
「なっ…あ、あたしがあの時、どんな気持ちで…もっと他に誘い出す方法があったでしょうが!」

確かに普通にNYに行ってたら牧野の気持ちは聞けなかったかも
そうなると葉山の夜もなかった訳だし
でも全然有り難くは思わないけどね

「悪かったね、つくしさん。将来必ずつくしさんの為になると思って、つくしさんのご両親と相談した上で楓さんにお任せすると決めたんだよ」
「ごめんな、つくし…パパ達じゃ~つくしに苦労ばかりさせて幸せにしてあげられないから」
「類さんがね、この島に来る2ヶ月位前に、わざわざ家に挨拶に来られて、必ず幸せにしますっておっしゃってくれたの。ママそれを聞いて、皆さんにお願いして本当に良かった、間違いじゃなかったって思ったのよ」
「姉ちゃん、その日からほぼ毎日、花沢さん家に来てたんだよ」
「花沢類が家に?」
「あい」

牧野がNYに行った日に挨拶に行ってから、島に来るまで殆ど毎日行ってたかもね
なんか牧野の実家って居心地いいからさ

「あ、あの…でも最初からそう言って下されば…」
「つくしさんを育てる上で、二人が連絡を取れないよう提案したのは私です。つくしさんに集中させる為に」
「そしてそうする事で類が変わるはずだと思ってね」

ふ~ん、一石二鳥って事
クスッ、司にも諦める時間が必要だったから、一石三鳥かも

「類が納得のいく男になったと最終的に判断を下すのは司君に任せたんだよ」
「まぉ~シナリオは任せたが、最終決断は俺様が握ってた訳だ」
「思いのほか早く決断しなきゃいけなくて、焦ったんじゃないの、司」
「そ、そんな事ねぇ~ぞ」

クククッ、総二郎やあきらに協力して貰ったのは焦ってた証拠でしょ
終いには俺に話しちゃったしね