心の扉⑧-2


「それじゃ牧野、司と別れ話するのにNYに行ったの?」
「うん…」

そういえばあの時、空港で牧野何か言いかけてた
あの時ちゃんと聞いていれば、絶対に牧野を諦めたりなんかしなかったのに

「でも牧野、ずっとNYに、司のとこにいたんだよね?確か婚約もしたって聞いたけど」
「楓社長が昔、あたしが道明寺財閥を救ったからって、NYで勉強出来るようにしてくれたの。それと…婚約は、え~と婚約したとかじゃなくて、指輪は渡されたけど、NYにいる間、気持ちが変わらなかったら返してくれればいいって言われて」

牧野とはすれ違う運命なのかもしれない

「それで気持ちは変わらず、指輪を返して帰国したって事」
「うん…」

牧野の事が好きだと気づいた時には司がいて、牧野と司が別れていたのに気がつかず牧野を諦めて、婚約して身動き取れなくなってから知る事になるなんてさ

「花沢物産にはどうして?司や司の母ちゃんを使わずに入るなんて牧野、相当優秀なんだね 」

道明寺財閥が動いていれば、もっと早く耳に入ったのに

「もちろん道明寺財閥には入れないでしょ。それに美作さんのとこは強面だし、花沢類のとこがいいかなって。でもさ、花沢物産って入るがあんなに大変だとは思わなかったよ」

こうして目の前に牧野がいても、もうどうする事も出来ない
牧野が花沢物産にいたって…

「牧野、俺の秘書になる?」

ただ傍で見る事しか出来ない

「な、なにを言い出すかな。あたしは今のままで十分だし、花沢類の秘書なんてすっごく大変そうだからパス」
「牧野がそう言っても、一応人事権持ってるからどうにでもなるんだけど、クククッ」
「へぇ~それじゃ、みずきさんを秘書にすれば?仕事中に居眠りしてもきっと膝枕してくれるよ」

あの雑誌か
牧野に見られたなんて、ホントあの人余計な事してくれたよ

「膝枕なんかしてもらった事ないけど。牧野以外はね」
「フフフッ、花沢類ったら照れちゃって。三年寝太郎の花沢類とずっと付き合ってるのにありえないつ~の」

なんか思いっきり誤解されてる

「あのさ、あの人と知り合ってまだ半年くらいなんだけど。それにデートすらした事ない」
「へっ?だって雑誌に…」

きっと牧野と司が上手くいってたら誤解されたままでいたかもね

「あの人とはお見合い。あの写真を見るかぎり大学は同じだったみたいだけど、まったく知らない」
「そ、そうなんだ。あたしはてっきり…でも…何も変わらないよ…」

何も変わらない? 

「牧野?」

今にも泣き出しそうな顔
そんな顔を見たら…

「あっ、え~とだってみずきさんと婚約したのは事実だし、結婚も…するんだから…やだ、あたし何で…ごめん…あっ」

やっぱり諦められない
もう気持ちを抑えるなんて出来ない

「牧野…」
「花沢類…あたし、あたしね…」

こうして牧野を抱きしめてるとホント落ち着く
心に扉をかけても牧野を前にすると、いとも簡単に外れるなんて

「花沢類を困らせるだけだって解っているのに、あたしどうしたら…」

やっぱり何かあったみたいだね
帰国しても連絡して来ないなんておかしいとは思ってた

「牧野、俺って確かピンチの時の花沢類じゃなかったっけ?」

牧野を守りたい
傍でずっと

「は、花沢類…」
「俺に出来ることなら何でもするよ。牧野の為ならね」

もう気持ちは止められないから
でも今は…

「ど、どうしよう。あのね、あたし本当は…花沢類が」

牧野!?

ピンポン ピンポン

「NYへ行く前からずっと」

ピンポン ピンポン

大事な話をしてるのに、一体誰?
しかも夜に訪ねてくるなんてさ

「ご、ごめん、花沢類。誰か来たみたい。でも誰だろう。ここに住んでるの知ってる人なんて…」

新たな男出現なんて事はないよね

「あっ、川島部長だ。あれ?確か二回チャイムが鳴るのは玄関のトコだったはず…どうやってオートロック解除したんだろう」

またあの人
ふ~ん
牧野の家に来るくらい親しい仲なんだ

「牧野、待って」

今開けたら聞けなくなっちゃうでしょ
NYに行く前からずっと何?

「はぁ~い、今開けます」

ガチャ

まったく牧野は…