「類、早かったな」
「司は?」
「あぁ、さっき意識が戻ったんだけどよ…」
なに?
どうしたの、あきら
「ホントに?じゃ~道明寺、大丈夫なんだよね?あたし、様子見てくる」
「あっ、待て、牧野」
なんか変だね、みんなして司の病室にいないで、待合室にいるなんて…
「エッ?何で」
「いや…とにかく類、お前だけ行け。司が類を呼べって言ってたから」
「どうして花沢類だけなの?何でみんな待合室なんかにいるの?」
司、もしかして…
「牧野、行って来る。ここでみんなと待ってて」
「う、うん…」
桜子も滋さんも、何でそんな暗い顔してるの
「牧野」
美作さんまで…どうしたっていうの
「あのな、多分だけど、司…記憶戻ったみたいだ」
エッ!?
今、なんて…
「意識が戻って俺らが病室に入った途端、司の顔つきが変わってよ『類を呼べ。まずは類からだ。お前らは出てけ』って追い出されちまったんだ」
道明寺の記憶が…
だったら何で花沢類が呼ばれなきゃいけないの
「あたしも行って来る。あたしが一番悪いんだから」
「牧野、止めとけ。とりあえず類に任せた方がいい。まだ司も混乱してると思うしな」
西門さん…
「牧野、類はお前と付き合う時点から、司が記憶を取り戻した時の事は覚悟はしてたから、大丈夫だよ。類を信じて任せときな」
美作さん…
コンコン
「司、俺、入るよ」
「類、テメェ~どういうつもりだ?」
やっぱりそうか…
いつかはこういう日が来るとは思ってたけど
「ん?何が」
「とぼけてるんじゃねぇ~!俺が記憶なくしてる間に、牧野に手出しやがって」
記憶がない時に、司にはさんざん警告したはずだけど
「仕方ないでしょ、牧野の事が好きだったんだから」
「なにをヌケヌケと…俺様がなによりも一番大切に思っているって知ってたはずだよな、類!」
知ってるよ、司と牧野の傍でずっと見てきたんだから
「司には悪いと思ってる。でもいつ記憶が戻るか解らないのに、牧野を縛りつける事は出来ないでしょ」
「だからって何で類、お前なんだよ!」
「ごめん、司」
「じゃ~解ってるよな、類。俺様の記憶が戻ったんだ。今までのようにはいかないぜ」
司…どういう事?
「俺の記憶がなくなる以前に何もかも戻せ。牧野は俺のもんだ」
「なに言ってんの、司」
「まずは婚約は白紙にしろ」
「司、悪いけどそれは出来ないよ」
「花沢物産と類、お前の体裁なら、俺様がきちんとしてやるから心配すんな」
そんな事関係ないでしょ
「司、記憶をなくして、俺と牧野が付き合ってから何年経ってると思う?もう元には戻れないよ。婚約も白紙にするつもりはないから」
「なんだと、類!!!」
バシッ!
「・・・っ、司・・・ホントごめん。でも俺はもう二度と・・・絶対に牧野を手放すつもりはないから」
「ふん!類、お前も覚えておけ、俺はぜってぇ~牧野を取り返すからな」
「は、花沢類!どうしたの、その顔・・・大丈夫?」
牧野、せっかく婚約したのに、大変な日になっちゃったね
「大丈夫だよ、牧野」
「類、司は・・・」
「うん、記憶戻ってた」
牧野、そんな心配そうな顔しないで
「司、牧野の事・・・」
「うん、宣戦布告されちゃった、取戻すって」
「って、どうすんだよ、類!」
「何が?」
「はぁ~ホントに呑気だな」
「だって記憶が戻ったって、今更何も変らないでしょ」
「でもよ、あの司の事だから何してくっか解んねぇ~ぞ」
そうかもね
記憶がなくたって牧野に執着してたんだから、素直に諦めてはくれないだろうし
「司に何をされようが、牧野を守っていくし、俺の気持ちが変る事はないから」
あたしが傍にいたら、花沢類に迷惑がかかっちゃう
やっぱり…
「花沢類…ごめんね」
「牧野が謝る事じゃないでしょ」
「だってあたしが道明寺の記憶がないだけで、勝手に別れを決めて…それにやっぱり…花沢類の事、好きになっちゃいけなかったのかもしれない…」
そうやって自分を攻めて、牧野の悪い癖だよ
「いつか司の記憶が戻るだろうって解ってて、俺は牧野といる事を選んだんだよ。牧野が好きだからずっと傍にいて欲しくって。だからそんな事言わないで、牧野」
「花沢類…」
花沢類の言葉がすっごく優しくて、でも不安でどうしょうもなくて、涙が止まらない…
「牧野、大丈夫だから、俺と一緒にいて」
そう言って、あたしを優しく抱き締めてくれる
あたしは花沢類が好き
道明寺の記憶が戻っても気持ちは変わらない
「あたしも花沢類の傍にいたい」
あたしが道明寺に、きちんと話をしないといけない
不安になってる場合じゃないよね
「おい、お前ら、俺達がいるの忘れてね?」
エッ!?
ヤダ…みんないたんだ///