大切な物 後編①


私は2年前からNYのケインズ邸に住んでいる

2年前、みんなの前から姿を消す手助けをしてくれたのがジョン・ケインズ…
ケインズ財閥の会長
そして私のもう一人の父
NYで道明寺邸を追い返された時に、セントラルパークでキャッチボールをしたオジさん

後から聞いた話だけど
その後からず~と私を見守っていてくれたらしい
私に気付かれないように女性のSPを付けていたって
道明寺の記憶喪失の時やNY行きが決まった時など、SPの人からの報告を受けて、何度日本に行こうとしたか解らないって言ってた

でもあの日
ケインズ会長は、私の前に現れたの…

道明寺がNYに行って最初の頃はホントにすっごく寂しくて、でもF3・T3の支えがあって、あたし本来の雑草魂がムキムキって出て来て、笑って過ごせるようになった
そういう日々を過ごしているうち、ある思いに気がついてしまった

みんなの前では、本当に心から笑って楽しくいられるのに、ふと一人になると考えてしまう
その日も学校の帰り、家に帰れば進がいるからと、いつものように近くの公園のブランコで考え込んでいた

あたしはみんなを裏切っている…
このまま一緒にいてはいけない…どうしよう
みんなの前から姿を消す?
でもどうやって?
そんなのやっぱりムリだよね
それじゃ~
きちんと話をして…
ううん、勇気ない…

あ~もう!!!

最後の一言だけ声に出して顔を上げると、見た事のある顔が近づいてくる???

「ツクシ~!!!」

キャ、キャッチボールのオジさん???

あれからオジさん…
いやいやケインズ会長に連れられて、ホテルの最上階のスウィートルームで食事中…
このホテル、ケインズ財閥が経営しているそうで…

道明寺で慣れてはいたけど
目の前に

「これ美味しいねぇ~」

とニコニコしているこのケインズ会長も、あたしには無縁の超お金持ち…
最近、あたしの周りって異常な気がする…
でもね、
そのお陰で?あたしは通訳がなくても、ケインズ会長と会話出来るようになったんだよねぇ

道明寺がNYに行った後、
大学のカフェに桜子、ナゼか優紀まで呼び出された

「牧野も絶対に必要だからこれからは話す時は全て英語でって事で」

とその日から全て英語での会話になった…

でもまぁ~そのかいあって今があるんだけどね♪
美味しい食事を頂いて家に送ってもらう車の中で

「つくしのご両親にもお会いしたいんだけど、明日伺っていいかな?」
「えっ?うちはいつでも全然アポなんて構わず大丈夫ですけど、わざわざそんないいですよ!」
「じゃ~明日10時にお伺いすると伝えて貰えるかな?」
「はい、でもあたし明日学校が…」
「通訳連れて行くから平気だよ!ツクシは気にせずに」

次の日、学校から帰って来てママに電話したら、パパと一緒に電話口で小躍りしてた…
ケインズ会長、あたしと進をアメリカに行かせたい
出来れば二人を養子にしたいと…
ケインズ会長の奥様は、病気がちで10年前に亡くなり、お子様は授からなかったらしい

小躍りしている親だけど、やはり『養子に』っていうのが引っ掛かっりお断りしたらしい…
だけど図々しく
アメリカ行きだけは…なんてお願いして、OKと即答して貰ってこの小躍り…

はぁ~この親って…

それからケインズ会長はお忙しいのに一週間毎日、パパ、ママに会いに来てくれて
ケインズ会長が帰国する前日、進とあたしも一緒に庶民の味のフルコース

食事が終わり

「ママ!とっても美味しいかった!!」

と上機嫌のケインズ会長の前に、いきなりパパとママが正座して深々と頭を下げた
驚いたケインズ会長が

「パパ、ママ!どうしたんです?」

と英語で話しかけ

「つくし!早く通訳して!」

とママに急かされる

「つくし、ちゃんと通訳してね、大事な話だから」
「うん、解った」

ケインズ会長が帰国するって聞いて、パパとママであたしと進の事を真剣に話し合って、結論を出したらしい…
養子にして頂く事を…
ケインズ会長の人柄に安心したのと、私達じゃ子供に苦労ばかりさせてしまうからと涙ながらに話して

ケインズ会長はパパ、ママの手を握り

「距離はあるけれど、パパ、ママ、私と一緒にこれからも二人を育てていきましょう」

と言い、進とあたしに

「何かして欲しい事はあるかな?」

と聞いてきた

進が

「図々しいお願いですが両親の生活の保証を…」
「うん、約束するよ」

そしてあたしは、決してみんなに知られないようにして欲しいとお願いした

「解っているよ」

そう言うと
優しくあたしに微笑んでくれた
そして出国まで内密に手続きをすませ
パパとママに

「いつまでもあなた達は私達の大事な子供だからね」
という言葉をもらい、日本をあとにした