気づいた思い①


あの牧野に後押しされてフランスへ、静の元へ来たけど
クスッ、まさか毎日あんたの顔が浮かぶなんて思わなかったよ

「静、俺、日本に帰る」
「そうね。少し寂しいけど、類の為だから」

静はただの憧れだったって、フランスに来てやっと気づくなんてね

「今までありがとう、静」
「うん。類、つくしちゃんを大事にしなきゃダメよ」

牧野を大事にか
日本にいる時から静によく言われてた
静はやっぱり『姉さん』なんだ
よく見てるよ、弟をね
俺自身、気がつかなかったのにさ

あのお気に入りの非常階段に突然現れた牧野
大きな声で叫んだかと思えば、スッキリした顔していなくなる
そういえばよくF4の悪口も叫んでたっけ
学校で唯一安らげる場所だから、誰にも邪魔されたくなかったのにね

司に赤紙貼られて、水浸しになって非常階段に現れた牧野を見て、あの時、何故だか牧野ならいいと思ったんだ
司に宣戦布告した時も、あんたらしいよと思いつつ、心の中でガンバレって思った
人にまったく関心がないのに、牧野だけは何故だか気になって、非常階段に行くのが楽しみになってたんだよね

クククッ
俺てホント気づくのが遅すぎ
大声で叫んでいたのが牧野だって解った時から、俺、あんたに惚れてたんだよね

早く牧野に会いたくて、空港からそのまま学校に向かった
お昼休みだから非常階段にいるはずと思ったのに牧野はいなくて、仕方なくラウンジに行くと、何だか騒がしい
はやし立てる口笛と、やたらと『道明寺さん、おめでとうございます』 って声が聞こえる
俺のいない間に、司が婚約でもしたなんて事はないと思うけど

「ただいま、司」
「る、類のそくっくりさんだ」

ホント司は相変わらずだよね
でもそんな事よりなんで司の隣に牧野がいるの?
しかも肩なんか組んじゃってさ

「ま~きの、久しぶり」
「ひ、久しぶりだね、花沢類///」

クククッ
真っ赤になって、俯いちゃって
牧野、あんたってホントに可愛いよね

「牧野、話があるから来て」
「お、おい、類!俺様も話がある」

司の話?
そんなの後でもいいでしょ

「悪いけど…」
「俺様と牧野、付き合ってるんだ」

エッ?
なに言ってんの、司

「なっ…ち、違う」

司に抱きしめられちゃって
俺のいない間にそんな風になってるなんて、ビックリだよ

「ふ~ん、そうなんだ」
「まぁ~そういう事だ///」

随時と嬉しそうだね、司
でもさ、そんなの俺が認めるわけないでしょ

「牧野おいで」

まったく
いつまで司に抱きしめられてるの

「キャ!は、花沢類///」
「なっ、類!牧野!ど、どこ行くんだ、待て!」

まさか司が牧野を好きになるとは思わなかった
司に嫉妬する程こんなに牧野の事が好きだったくせに、早く気づかなかった自分に腹が立つ

「は、花沢類…も、もう少しゆっくり歩い…キャ!」
「ごめん、牧野。早く二人きりになりたいから」
「わ、解ったら///み、みんな見てるし…え~と///」

さっきだって司に抱きしめられてるとこ、みんなに見られてるでしょ

「非常階段に行こ」
「う、うん///」

ねぇ~牧野
俺はみんなが見てようが、牧野を抱きしめるし、キスもするよ
牧野が俺を好きならね

ギギィ~
バタン!

牧野、緊張してる?
なんで降りてこないの

「抱っこして降ろす?それともおんぶがいい?」
「そ、そんな事しなくても…い、今降りるから」

まずは司と牧野の事、聞かないとね
司は本気みたいだからさ

「こ、ここで花沢類と会うの、久しぶりだよねぇ~、ハハハッ」

久しぶりだからって、別に笑うとこじゃないでしょ
ホント牧野って面白い

「司と付き合ってるって本当?」
「あ~あれは勝手に道明寺が言ってるだけだよ」

やっぱりね
そんな事だろうとは思ってたよ

「司は本気みたいだけど?」
「まさか!あたしをからかって遊んでるだけだって」

あの司が真っ赤になって嬉しそうにしてるのに気づかないなんて、牧野って鈍感なんだね

「ふ~ん。じゃ~牧野、俺と付き合おうか?」
「なっ…は、花沢類まであたしをからかわないでよ///は、花沢類には静さんがいるでしょうが!」

そうだった
牧野に後押しされてフランスに行ってたんだっけ
あんたそれでも男なのって言われてね

「フランスに行ったらさ、静といるのに、いっつも邪魔する奴がいたんだよね」

夢にまで現れるんだから、クスッ

「静さんの事が好きな人がウロウロしてたとか?それとも反対されてた…って事はないか。花沢類だもんね…それじゃ…」
「だからそいつに会いに帰って来たんだ。言いたい事があるから」
「ヘッ!?日本にいるのに邪魔してたって事?あっ、もしかして道明寺とか?うんうん、あいつならやりそうだよ」

ホント司って可哀相だよね
本気で好きなのに、牧野、全然気づいてないし
今だって犯人扱いだもんね
まぁ~鈍感な牧野に、遠回しな言い方してる俺のせいもあるけど

「クククッ、司じゃないよ」
「う~ん、それじゃ…」