代償の果てに⑨-2


1カ月間、NYか…
はぁ~
また徹底的にシゴかれるんだろうな

フフッ、でも道明寺の俺様を調教するよりずっと楽かも
高校生の頃からは想像出来ないくらい仕事はすっごく優秀なくせに、俺様な性格はホント変わらないんだから

結婚したら少しは…
フフッ、変わらないか
滋さんも大変だよね

戻って来たらすぐ道明寺と滋さんの結婚式

本当は色々と滋さんのお手伝いとかしたいんだけど、こんな立場のあたしになんかにきっとしてもらいたくないよね…

結婚が決まった時も本当はもの凄く嬉しくて、滋さんをムギュってして笑顔でおめでとうって言いたかったのに、仮面をつけてたあたしには、事務的な事しか言えなかった

きっと結婚式でも仮面ははずせない…
滋さん、ごめんね
でも本当に幸せになって欲しい
心からそう願ってる

おっといけない、いけない
考え込んでる場合じゃなかった
早く用意しなくっちゃ!

はぁ~
でも最近やたらと疲れちゃって、身体の調子が悪いって言うか
フフッ、あたしって働きすぎかも
貧乏暇なしってホントよく言ったもんよね

NYに行ったら少しは気が楽になるし、気兼ねなく花沢類との思い出に浸れるし
よし、頑張ろ!


やっぱりね
牧野はいないとは思ってたけど

「よぉ、牧野がいなくて残念だったな、類」
「別に」

ただ大河原が一緒だとは思わなかったけどね

「類君、久しぶり!パーティー以来すっごく忙しいみたいだね」

ククッ、それって殆ど司のせいなんだけど

「結婚式まで後1ヶ月のあんた達ほどじゃないんじゃない?」
「ハハハッ、ホントそうなのよ、秘密で結婚式の準備をするのは色々大変なんだよね。私達が動くとマスコミにバレちゃうし」

秘密するから大変なんでしょ
道明寺の力を使えばマスコミなんてどうにでもなるのにね

「で、その秘密の結婚式はどこでやるの?」
「エッ!?司、類君に言ってなかったの?」

ふ~ん
俺だけ知らなかったんだ

「ワ、ワザとじゃねぇ~ぞ!忙しくて忘れてただけだ…やべ、牧野にも言ってねぇ~や」

ククッ、それって絶対にワザとでしょ
俺と牧野だけ言わないなんてさ
もしかして会わせたくなくて、呼ばないつもりだったとかね

「もう、司ったら!つくし、明日から結婚式までNYなのに何してんのよ」

明日からNY?
まったく…
そんなに会わせたくないの、司

「ギャーギャーうるせ~な!ババァに言っておくからいいだろ」
「帰る」

結婚式までNYにいるとなると3ヶ月も牧野に会えない事になる
そんなの我慢出来ないから

「ちょ、ちょっと待て、類」

ガシャ

「遅くなりました」

三条…

「花沢さん、ドコに行くんですか?」
「帰る」
「今日は牧野先輩に会うより、花沢さんにとって大事な話があります。座って下さい」

ふ~ん
やっぱり今日はすべて話してくれるって事か
でもわざわざ牧野がNYに行く前日になんて
ククッ、司、性格悪すぎ


「西田、あなたから見て牧野はどうかしら」
「完璧かと。他の企業が引き抜こうと色々模索していていると耳にしております」
「そう…」
「何か心配な事でもございますか?」
「…牧野を呼んで頂戴」
「畏まりました」

確かに西田の言う通り、思った以上に完璧な人材にはなった
私が教えているのだから当然といえば当然

結婚式まで後2日
予定通りではあるけれど
ただ…

コンコン

「失礼致します。楓社長、お呼びでしょうか」

やっぱり…

「西田、スケジュール調整して頂戴。二時間で戻ります。牧野、一緒に来なさい」
「は、はい…」

まったく牧野は…
自分の事なのに解らないのかしら


「あの…楓社長、どちらに向かっているんですか?」
「行けば解ります」

今日はこれから花沢社長がお見えになる
勘の鋭い方だから上手く誤魔化さないと

「牧野、降りなさい。行きましょう」
「か、楓社長…ここって…」


先程とはうって変わって、青ざめた顔をして
その様子からして私の思った通りかしら

「か、楓社長…あ…あたし…」
「私に任せて貰えないかしら」
「えっ…で、でも…」
「悪いようにはしません。私を信じなさい」
「…は…はい…」