星に願いを(類視点)①


一年ぶりの軽井沢の別荘
ここはホント変わらない

11月22日

確か牧野が『いい夫婦の日』って言ってたっけ
去年、たまたまこの日にここへ来ただけで特別な意味はないんだけど

ただ…
願い事をしたから
あの時牧野と見た、流れ星に

別に約束したわけじゃないし、牧野も日本にいないのに、気がついたら一人でここに来てた
クスッ、去年は総二郎達もいて賑やかだったのにね

一年前の11月22日

NYにいる司から連絡があまり来なくなって、最近特にため息が多くなった牧野を元気づけるのに、みんなで作戦を練って、拉致るように牧野をこの別荘に連れて来た
クスッ、もちろん牧野のバイトが休みになるように、お店の商品買い占めてね

「ホント信じられない!バイトをお休みにさせるのに、バイト先の商品を買い占めるなんて普通しないでしょ。ホントお金持ちはやる事が半端じゃないんだから」
「茶会があるから買っただけだぜ。牧野の為じゃねぇ~から気にすんな」
「はぁ~白々しいんだから」

最初は怒っていたのに
クスッ、今はぐっすり眠っちゃって
いつもと反対だね
俺が牧野に膝枕してるなんてさ
ずっとこのままいたいんだけど、総二郎達がニヤニヤ見てるし、残念だけど着いちゃったからね

「ま~きの、起きて」
「…う…んん…」

ホント牧野は無防備すぎ
こんな可愛い顔で寝入っちゃって
間違いなくキスして起こしてるよ、司の彼女じゃなかったらね

「もう着いたよ、牧野」
「…ん…ん?…は、花沢類///」

クククッ、今の反応なら間違いなく抱きしめてるよ

「牧野が起きないから、みんなもう別荘に入っちゃったけど」
「ハハハッ…ご、ごめん///」
「牧野、顔真っ赤」
「だ、だって目を開けたら、花沢類の顔が…///」

顔が?
別になにもしてないけど

「俺の顔へん?」
「そ、そうじゃなくて…誰だって起きて花沢類の顔が見えたら…///」
「真っ赤になるの?」
「…た、たぶん///…は、早く別荘に入ろう!ほ、ほら桜子と滋さんじゃ~料理が作れないでしょ」

クククッ、ちょっとイジメすぎたかな
もう諦めなきゃいけないのにね
会う度に、あんな牧野を見る度に、諦めるどころか、牧野をどんどん好きになっていく

「つくし~遅いよ」
「先輩がいないと何も出来ないんですから」
「ご、ごめんねってあんた達、格好だけは一人前なのね」
「先輩のもちゃんと用意してありますから」

クククッ
三条に無理やりフリフリのエプロン着けさせられて…でも結構似合ってるよ、牧野

「お~い、類!寒いから早く暖炉つけようぜ」
「暖炉は俺がやるからいいよ。あきらと総二郎はあっちの部屋から適当にワイン持ってきて」

こうしてると元気いっぱいでいつもの牧野なんだけど、最近特にため息が多くなったよね
司と何かあったようには見えないし、少なくなったとはいえ、連絡は来てるみたいだし

「わぁ~滋さん!だ、だめだよ、お水のままパスタいれちゃ…さ、桜子!そんな持ち方じゃ手切っちゃうでしょ」
「おいおい、あれでホント大丈夫なのか?」
「俺達今日、飯にありつけねぇ~かもなって明日の朝もか?」

総二郎、それは大丈夫でしょ、牧野がいるんだし

「あっ、桜子逃げないでよ」

かえって二人がいない方がはかどるかもね
料理なんてした事がないんだからさ

「暖か~い!花沢さんって本当に暖炉がよく似合いますよね」
「そうかぁ~俺の方が似合うんじゃね?」
「総二郎はやっぱり和室だろ。その点、俺の家はメルヘンな洋館だから似合って当然」
「お二人共、似合うとは思うんですけど、花沢さんは暖炉の前で静かに読書してるイメージが浮かぶんですよね」

そういえば、寒がりなのに、この別荘に来る時は決まって暖炉に火をつけてる気がする

「桜子戻って来て!盛り付けお願い。滋さん一人じゃ大変だから」
「は~い!それなら任せて下さい」

初めてかもね、この別荘がこんなに賑やかな事って

「先輩!何してるんですか?始めますよ」
「もう終わるから、直ぐ行く」

さすがは牧野だね、ワインに合わせたのかな
お弁当とは全然違う料理だけど

「おっ、心配してたけど結構旨そうじゃん」
「そうでしょ~って味は全然保証出来ないだけどね。だってこんな高級素材、料理した事ないからさ」
「確かに今日は珍しい食べ物はねぇ~な」

何気にみんな、牧野の珍しい料理好きなくせに
俺も牧野が作る黄色いの、一番好きなんだけど

「でもさ、盛り付けはバッチリでしょ!滋さんも桜子もキレイに飾られた料理、見慣れてるからお願いしたんだ。はい、これは花沢類の分ね」

俺だけ特別なの?
嬉しいよ、牧野

「なんだよ、類だけかよ」
「だってみんなビンボー食なんて嫌でしょ?花沢類は卵焼きが好きだからね」

知ってたんだ、俺がこれ好きだって
でも今日のはちょっと違う?
大根おろしがついてる

「んじゃ~そろそろ始めようぜ」
「牧野、今日は何もかも忘れて楽しめよ!カンパ~イ!」
「うん、ありがと!あっ、花沢類、大根おろしにお醤油をかけて」
「あい」

いつもより甘くないけど…

「牧野、こっちの方が美味しい」
「滋ちゃんも食べたい!類君、一つ頂戴」
「ダメ」

せっかく牧野が俺だけに作ってくれたのに、あげる訳ないでしょ

「類君のケチ!」
「いくら言っても無理ですよ、滋さん。いつも先輩には学食食べさせて、先輩が作ったお弁当は花沢さんが一人で食べちゃうんですから」
「類と牧野は俺らが入り込めねぇ~とこがあるからな。正直言って司より類の方が牧野にあってんじゃねぇ~のって思うし」
「と、突然なに言ってるのよ、美作さんは///」

クククッ
あきら、それってすっごく嬉しいけど、牧野の気持ちが司にあるんだから、ありえないよね