幼稚舎入園①


~Tsukushi~

あっという間に月日がたち、陸・月、2人とももう直ぐ入園

陸・月が産まれてから、お父様も類も忙しいはずなのに、競うように帰って来てはお風呂に入れたり、ミルクをあげたりしている

「父さんいつもずるい、今日は俺が月をお風呂に入れる!」
「絶対にダメだ!遅く帰ってきたお前が悪い」
「父さんのせいだろ、自分の仕事、俺に押し付けてさっさと帰って」
「うるさいパパでちゅねぇ~パパは放って置いといて、月、お風呂入ろうね!」
「あっ、父さん!」

殆ど毎日見る光景…

お父様は子供が産まれてくる前まで、男の子が…って言ってたのに、月を一目見た時から月にメロメロ…
そして

「陸はお祖母ちゃまと入りましょうね」

お母様は陸にメロメロ…
そういうあたしも類そっくりの陸に、メロメロなんだけど…

でも1年を過ぎた頃、お父様と類の攻防も終りを告げた

陸と月から離れたくなく、今まで何とか行かずに頑張って来たお父様だけど、社長が長期不在ではと、とうとうフランスへお母様と行く事になった

「やっと月を独り占め♪」

って類ったら歓びすぎ!
お父様、超不機嫌だから…
お母様は泣いちゃってるし…

毎日、メールで陸・月の写真を送る事を強制的に約束させられ、お父様、お母様は嫌々フランスへ


お父様達がフランスへ行って半年位たった頃、社長秘書になった相場さんから電話が来た

「つくしさん、お願いがございまして…」

最初、相場さんに『つくし様』って言われたんだけど、歯痒くってなんとか『つくしさん』にして貰った

「相場さん、どうされたんですか?」

相場さんがお願いなんて…

「実は…社長が事ある毎に日本へ帰ろうとなさいまして…」
「はぁ~?」
「陸様・月様に会いたいと…正直仕事も捗らない状態で…」

まったくお父様ったら…

「ご迷惑お掛けしてすみません」
「いいえ、それで出来ればこちらに陸様・月様とご一緒に一度、遊びにいらして頂けないかと…」
「ヘッ?」
「恐らく、プッ!花沢専務が難関になると思いますが、お願い出来ませんか?」
「さすがに相場さんよくご存知で…ハハハッ」
「無理言ってすみません」
「いいえ、何とかしてみます」

何とかするって言ってもね…

今、陸・月と天使の微笑みで遊んでいる類に、なんて言ったら…

「つくし」
「エッ?なななに?」
「さっきからなにブツブツ言ってるの?」

…怖い

る、類…
…そ、そんな怖い目で
み、見ないで…

「じゃ~俺、つくし達がフランス行ってる間仕事しない」

って類…
子供じゃないんだし、仕事しないって…
陸・月と遊び始めちゃって、お話終りですかぁ~?

「ねぇ~類」
「…」
「類ってば!」
「…」
「類…」
「絶対ダメ!」

こうなれば、あ、あの手でいくしかない!!!

「なんでも類の言う事聞くから、今回だけね、お願い」

上目遣いで類を見る

「はぁ~」

呆れたようにため息をつき、あたしを抱き締め

「つくし、わざとでしょ」
「だって…」

今度は類がビー玉の目で寂しそうにあたしを覗き込んだ

「つくしまでフランスに行ったら俺寂しいでしょ」

うわわわ///
ダメ…///

チュッ!

「今回だけだよ」
「エッ?///」
「そのかわり、つくし何でも言う事聞いてくれるんだよね」
「あ、うん…」
「それじゃ~今夜楽しみにしてるね!」
「なななな///」

このフランス行きから今に至るまで、3ヶ月に1度、あたしは陸・月を連れてフランスに行っている…
そして3ヶ月に1度、必ず類のお願いを聞くはめに…