代償の果てに⑩-3


「ただな、絶対に滋からバレんじゃねぇ~かって思って、極力みんなと接触させないように一緒にNYに連れて行ったのに、日本に戻った途端に三条にバレやがったからな」

早い段階で見破るなんて
さ、さすがは桜子、恐るべし…

「ごめんって!でもさ、桜子なら仕方ないって司も言ってたじゃん」
「花沢さんがずっと日本にいればきっと私と同じ位のタイミングでバレてたと思いますけど、滋さんの行動で」
「まったく滋、お前はな、一緒にマンションに住むだの、牧野の手料理が食べたいから何とかして持って来いだの、俺様に危ない橋ばかり渡らせやがって。そんなんだから直ぐにバレちまったんじゃねぇ~か!」

エッ!?
もしかしてあのお弁当、滋さんの為に持って帰ったの?
NYにいる時もあたしが手料理を作る度にお弁当にして持って帰ってた…

「だっていつも司ばっかりつくしの手料理食べてるなんてズルイじゃない」

滋さん…
ありがと、すっごく嬉しいよ

「ふ~ん、司、そんな頻繁に牧野の手料理食べてたんだ」
「ヘヘン!羨ましいだろ、類。日本に帰って来てからもマンションで一緒に食ったしな」

もう!
道明寺ったら変な事言わないでよね

「あ、あのね、花沢類。そんな作ってないから。あ、あたし大学に行って、仕事もしてだったから料理してる時間もなかったし、日本に帰ってからはたったの一回だけだから」
「クスッ、別に気にしてないよ。これからずっと牧野の手料理食べられるからね。それにマンションって言っても一緒に住んでた訳じゃないでしょ」

知ってるの!?

「花沢類、もしかして来た事があるとか?」

でもそんなはずはないよね
最上階は誰でも行けるようにはなってないんだから

「玄関が二つあるんでしょ」
「へぇ~よく解ったなぁ~類」
「つ~か、司から結婚させてやるって言われただけなのに、いつから気がついてたんだよ」
「俺のパーティーの後」

そ、そんな前からこの計画に気づいてたなんて…
やっぱり花沢類はスゴイよ

「パーティーの後って司から言われる前から解ってたのか」
「うん」

あの夜に牧野を抱いた時、確信したから、司の女じゃないって
牧野、初めての時みたいだったからね
クスッ

「おいおい、類。牧野見てなに笑ってるんだよ」
「あ~もしかしてあたしが結婚式まで全然気がつかなかったからって笑ってるんでしょ、もう!」

パーティーの後って言ったのに、まるで解ってないんだから
ホント牧野は鈍感だよね

「クククッ、そんなんじゃないよ。ただ真相を聞いて、牧野は司に感謝するのかなってね」
「フフン、どうだ牧野、最高の演出だっただろう。なんなら感謝の意味を込めて頬にキスくらいさせてやってもいいぜ」

まったく司は…
ホントに諦めたの?
嬉しそうな顔しちゃってさ
でも知らないよ

「じゃ~道明寺には特別に頬にパンチならしてあげるよ」

ほらね、クスッ

「わ、解ったから、そのファイティングポーズは止めろって」
「そう?遠慮しなくてもいいのに。あたしを散々脅してたんだから一発くらいはいいんじゃない?」
「わ、悪かったよ」

さすがは牧野、元祖猛獣使いだね
司が謝るなんて激レア、速攻で決めちゃうんだから

「フフフッ、一回くらい脅し返さなきゃね!あ~スッキリした」
「では私も早くスッキリしたいので最後の話を」

ん?
司の母ちゃん、まだ他になにか企んでた事があったの?

「最後の話って…他にもなにか…」
「今日からつくしさんは道明寺財閥の人間ではありません」

あ~なんだ、その事ね
そんなのは当然でしょ

「エッ…あ、あたしクビですか?」

クククッ、自分の事だとここまで鈍感になっちゃうんだね、牧野

「いや、クビではないよ。花沢物産へ戻って来ただけだからね。つくしさんは今まで道明寺財閥に出向してただけなんだよ」
「出向!?それじゃ~あたしって始めから花沢物産に入社してたって事…」
「類さんと結婚が決まっている人を道明寺財閥に入れる訳がないでしょう。それにいざあなたを手放す段階になって私が戸惑わない為という意味もあるかしらね、花沢社長」
「ハハハッ、まぁ~保険みたいなものだな。悪かったね、楓さん」
「いいえ、今後つくしさんが活躍してくれれば私の株もあがりますから。でも少し先になりそうですけどね、つくしさん

なんだ、司の母ちゃんも知ってたのか

「エッ!?」
「類さんは気づいているようですけど。サプライズを期待しているわ」
「なんだ、牧野。お前まだ完璧に仕事を覚えた訳じゃねぇ~のか。フン、のろまな亀だな」
「なっ…う、うるさい、道明寺!」

司も相変わらず鈍感
クスッ、司の母ちゃんも呆れた顔してるし

「花沢さんがあまりにも優秀すぎて時期が早まったから仕方がないんじゃないですか」
「うぅ…桜子まで…」

へぇ~
今回は三条も気づいてないんだ
まぁ~殆ど離ればなれの状況で、まさか俺と牧野が…だもんね

「たしかにフランス、日本で司に二連勝しちまって、司も認めない訳いかなかったからな」
「チッ!」
「つくしへの愛の力よねぇ~」
「し、滋さん///」

クククッ、確かにね
これからもっと大変になるよ、司
牧野を手に入れたからね

「でもそのお陰でこっちも大変だったんだよね。なんとか教会は完成したから良かったけど、ホテルは完璧に工事が終わってないしね」

そういえば他にも色々建ててる途中みたいだけど

「もしかしてこの島、一般公開するとか?」
「あぁ、半年後にな」
「あなた方の結婚式はいい宣伝になりますから」

さすがは司の母ちゃん
何でもビジネスに結びつけるなんてさ

「私達が戻ったらマスコミ解禁!宣伝のオンパレードだよ!」
「予約が殺到しそうですよね」
「そうだ!一年後、ニッシーかあきら君がここで結婚式すれば、またまた更なる宣伝になるし、私達の結婚記念のお祝いも出来るから、来年もここで集まろう!」

結婚式は無理でしょ
俺と牧野の場合は予定通り上手くいったかもしれないけど

「それじゃ~来年は俺と桜子の結婚式だな」
「そうですね、美作さん」
「一年後のご予約、ありがとうございま~す!」

大河原に載せられて、そんなに簡単に決めちゃって
まぁ~いつかは結婚すると思ってたからいいのかもね

「じ、自分の事でいっぱい、いっぱいだったから、二人がそんな仲だったなんて全然気がつかなかったよ…」

クククッ、いつもの事でしょ

「先輩だけじゃなく、道明寺さんもですから安心して下さい」
「どういう事だ?お、お前ら、俺様の前でそんな素振り見せなかったよな」

ふ~ん、そういう事
三条、あんたってホント敵に回したくないよね

「道明寺さん。今まで皆さんを騙してた罰、ちょっとした仕返しです」
「て、てめぇ~ら、俺様を嵌めやがったな!」
「ほらほら司、そんな怒らないで。いいサプライズだったんだからさ」
「悪かったな、司。まぁ~そういう事だから来年よろしくな」

一年後ね
大丈夫でしょ、きっと