心の扉①-1


「花沢類、あのね…」
「ん?」
「牧野、さっきから搭乗のアナウンスが流れてるぜ」
「あっ…う、うん」
「乗り遅れるとまた司が怒り出すから早く行け」
「…そ、そうだよね。それじゃ~行ってくる」
「あっちでイチャついてばかりいんじゃねぇ~ぞ。司の母ちゃんに睨まれっからな」
「ちょっとそんな事するわけないでしょうが!まったくもう…ってホント乗り遅れちゃう。じゃ~ね」

「…バイバイ、牧野」

あれから五年か…
あの二人は上手くいってるのかな
牧野がNYに行って直ぐ、婚約したらしいって噂は聞こえてきたけど
司らしくないっていうか、もしかして司の母ちゃんがまた企んだのかな
大々的に婚約発表すると思ったら、憶測報道だけ流れただけだった

『道明寺財閥の後継者、道明寺司が婚約したらしい』

たったそれだけ

でも俺が二人の話題を避けていたから知らないだけかもしれない
確実にしてるはずだから
あの時、みんなの前で約束したからね

『今は道明寺と一緒にNYへは行けない。高校を卒業したら必ず行くから。それまでは待って欲しい』

『ふん、解った。その代わり、俺様を待たせるんだ。お前がNYに来たら、直ぐに婚約するからな』

そう言って司は一人でイヤイヤNYに行った
そして一年後、卒業と共に、牧野は司の待つNYに行ってしまった
司との約束を守る為に…

今更こんな事思い出すなんて
明日、五年ぶりに日本へ帰国するからかな
クスッ、もう俺には関係ないのにね
NYに行く牧野を見送ったあの空港で、決めたんだ

もう牧野を諦めるって

もう手に入らない、想っているだけの恋はしたくないから