代償の果てに⑧-3


今、牧野の顔、真っ赤になってるのかな、クスッ
膝枕してもらってると、顔が見えなくて残念

「ねぇ~牧野」
「ん?なに、花沢類」
「何で黙ってNYに行っちゃったの?」

手が止まっちゃった
牧野に頭撫でられるの、結構好きなんだけどね

「え、え~と…ど、道明寺って、ほらいつも突然じゃない。どうせならNYで勉強した方がいいって勝手に決めちゃって…」

ふ~ん、いきなり西田さんが現れて、牧野と丸一日過ごした翌日に突然NY行きなんて不自然すぎるでしょ

「あの時の司の手紙に書いてあったの?」
「う、うん…ごめん」

司がNYに行く時、頑なに断り続けたのに、たった手紙一つで決めたんだ、NY行き
それって変でしょ
牧野、他に何ったんじゃないの?
ククッ、聞いてもきっと答えてはくれないだろうけど

「そっか」
「花沢類…本当にごめんなさい」
「クスッ、牧野が謝る事なんてないよ。でも五年間も司の母ちゃんに鍛えられただけあるよね、日本に帰国した時、冷酷な感じがそっくりだった」

それに牧野がすごくキレイになっててびっくりした

「そ、そんなに似てる?何だか微妙な感じ」
「あきらなんかムシされてたしね、クククッ」
「ハハハッ…ムシした訳じゃないんけどな。あの時はホント時間がなくて」

そう?
何だか早くこの場を離れたいって感じだったけど

「これからもずっと秘書のままなの、牧野」
「エッ?もちろんクビにならなければ、道明寺の秘書だけど?」
「クスッ、昔の牧野には戻らないのって意味なんだけど」


昔のあたしか…

そうしたいんだけど、普通にしてたら、花沢類が好きだって直ぐにバレちゃうからね
今だってこれでも頑張って気持ちを押さえてるのに…
それに…道明寺の事もあるし

「仕事中だったら普通には出来ないよ」
「仕事中じゃなきゃ、普通にしてくれるんでしょ」
「そうだね…」

でもプライベートは今日で最後だと思う
今回は花沢社長から頼まれて仕方がなく、花沢類といる事を道明寺が許してくれただけだから

エッ!?
は、花沢類?
か、顔が近いんだけど…

チュッ!

なっ、何して…エッ!?

「少しだけだから、このまま抱き締めてていい?」

花沢類…

「…う…ん」

葉山の一日が最後の思い出だと思っていたのに、こうしてまた花沢類に抱き締めてもらえるなんて…

あたし…

「牧野、俺はあの時からずっと変わらないよ」

エッ!?

「牧野が好きな気持ちはずっと変わらない。あの時、いい加減な気持ちで牧野を抱いた訳じゃない」

花沢類…
あたしだって花沢類が好きだから…だから

「俺を信じて」

こんなあたしなのに…

何も言わずに道明寺のトコに行ってしまったんだよ
それでもあたしを好きだって言ってくれるの?
花沢類に飛び込んでもいいって言ってくれてるの?

ムリだよ…
だって道明寺が…
あたしのせいで花沢類に何かあったら…
あたしは…



やっぱり何にも言ってくれないか
急ぎすぎちゃったかな
昔のままの牧野と今日一日ずっと一緒に過ごしてたから、このまま傍にいてくれるんじゃないかって期待したんだけど、仕方ないね

「ねぇ~牧野、就任のお祝い頂戴」
「ヘッ!?どうしたの、いきなり」
「ダメ?」
「いや、もう…は、花沢類、ズルイよ///そのビー玉の目で覗き込まれたら…な、何が欲しいの?」

クククッ、ごめん、牧野
俺も少しは安心したいからさ

「牧野」
「はぁ!?な、何言ってるのよ///そんなの絶対にダメ!」

解りやすい反応、クスッ
ホントはそうしたいけど

「残念、クククッ。じゃ~一つだけ質問に答えてくれる?」
「質問!?一つだけ?それだったら、どうぞ、どうぞ」

安心した顔しちゃって
ホントは聞きたい事はいっぱいあるんだけど

「五年前、本当に俺の事、好きだった?」

これなら答えてくれるよね

「…好きじゃなかったら、葉山のあの夜はなかったよ。花沢類が本当に好き…だった」

牧野の口から好きって言葉が聞きたかったんだ

「ありがと、牧野」

牧野、何で寂しそうな顔してるの?
そんな顔したら、このまま一緒にいたくなるでしょ

「花沢類は…」
「ん?」
「…あの時…本当にあたしの事、好きだったのかな…ってヤダ、あたし何聞いてるんだろ///」

ホント牧野は
さっきも言ったのにね