心の扉③-1


「花沢支社長、支社長就任パーティーの招待客リストが出来上がりましたが、社に戻られてから目を通されますか?」

「見せて」

後一週間か
ふ~ん
やっぱり司が出席するんだ
それにあきらと総二郎も
クククッ、怒られちゃうかな
散々電話したのにどうして連絡よこさないんだってね

「支社長、社に到着致しました」

正式に婚約発表したら、いくらでも連絡するし、会うよ

もちろん、牧野にもね

その日になればもう完全に諦めてるでしょ
正式に発表してしまえば、会ったって何したって、もうどうする事も出来なくなるんだから

「類さん」

結城みずき…
この人、何でこんな所にいるの

「どうしたの?こんな時間に会社になんか来て」
「ごめんなさい…類さんに会いたくて…帰国して1ヶ月になるのに全然会えないから」

俺は別に…なんて言えないか

「ごめん。色々忙しかったから。夕食は?まだなら行こ」
「えぇ。式の日取りとか色々相談したいから、お話しながらお食事しましょう」

式の日取り?
クククッ、どうせ結婚しなきゃいけないんだから早くても別にいいのかも
でもこれから正式に婚約発表なのに随分と気が早いよね

来るのかな…牧野
司の婚約者なんだから来て当たり前か

「………私、どうしたら忙しい類さんに会えるのか色々考えてみたの」
「ん…」

司の事だから牧野、司の秘書になってるかもね

「それで類さんといつでもランチや夕食に行けるように実は私…」
「ん…」

クスッ、俺だったら牧野が傍にいたら仕事どころじゃなくなるかも

「…さん、類さん?」
「あっ、なに?」
「お仕事の事、考えてらしたんでしょう?支社長になられて1ヶ月では仕方がないですわ。今度またゆっくりお話しましょう」

会えるかもしれない
そう考えただけで、牧野の事ばかり頭に浮かぶ

「…ごめん。一度、社に戻ってから送るから」
「会社まで送って下されば大丈夫ですわ、フフッ」

会社に車を待たせてたのか
丁度良かった
悪いけどあんたと一緒にいる気分じゃなかったから…