月の恋の行方①


月の様子がおかしい

翔達が帰国する少し前から、気がつけばため息ばかり
時折、パパの顔をじっと見てる
月に見られて嬉しいパパは、天使の微笑みで月を抱き締める

「ホント月はパパが大好きなのね」

ママ、ん~多分それはちょっと違う気がする
もちろん月はパパが大好きだけど…

学校が始まってからも、やっぱり様子が変だ
というより、もっとひどくなった気がする
月の部屋をそっと覗くと、翔達と夏休みに撮った写真を手でなぞり、深いため息をついていた
月もしかして!?

コンコン

「あっ、陸君」
「月、写真見て何ため息ついてるの?」
「エッ、あっ…何でもないよ。ただ夏休みみんなが遊びに来てくれて楽しかったなってさ」
「ふ~ん」

月もママと一緒だよね、目が泳いでる

「あっ、でも陸君は大変だったよね、ずっとももちゃんのお守りだったから。フフフッ、ももちゃん、陸君にベッタリだったし」

動揺するとよくしゃべる
これもママそっくり

「翔は月にベッタリだったじゃん」

ビクッって
月、分かりやすい反応だね

「そそそんな事ないよ」

ふ~ん、翔って事か
まぁ~誰でもいいけど
お願いだからパパにバレないように気をつけて


「パパ、おはよう」
「…リク、オハヨ」

はぁ~まったくパパは…
土曜日になると、いつもこんな調子

「つくし、本当に来ないの?会社でも出来るでしょ」
「もう類ったら!いつも言ってるじゃない、月もお手伝いしてくれるから会社じゃダメだって」
「月も一緒に会社に来ればいいでしょ」
「だからあたしも集中できないし、月はお手伝いの他にもピアノのレッスンもあるし、お友達が遊びに来たりするから」

ホント毎回毎回、よく飽きないよね
いつも同じセリフなのに

ママは土曜日と日曜日は、完全に会社はお休み
でも土曜日は、洋服のデザインを家でやってる
パパは土曜日も仕事
副社長だから仕方ないんだけどね

さてと次のセリフは

『つくしは俺がいなくても平気なんだ』
『もう類ったら。月と一緒にお弁当作ったから、月!パパのお弁当出来た?』

そしてママはキッチンへ…かな

「つくしは俺がいなくても平気なんだ」
「もう類ったら。月と一緒にお弁当作ったから、月!パパのお弁当出来た?」

タタタタッ

ほらね
そして僕は、この不機嫌なパパと対峙しなきゃいけないんだよね
はぁ~今日はどうやって機嫌とろかな

「パパ…」

あれ!?
今日は随分早くない?
もうお弁当出来たんだ

「どうしたの、月?」

さっきまでとはパパ、全然態度が違うんだけど

「パパ、ごめんなさい…パパの大好きな卵焼き…焦がしちゃったの…」

珍しい…
そりゃ~最初の頃は、よく失敗してたけど
最近じゃ、ママよりも上手に作ってたのに…

「せっかく月が作ってくれたんだから、ちゃんとお弁当に入れてくれる?」
「…うん」

大丈夫だよ、月
最初の頃、散々失敗した卵焼きを、パパは必ず食べてきたんだから


月、やっぱり変…
相変わらずため息は多いし
今朝の卵焼きといい、ソワソワと落ち着かない

「月!ママ、デザインの仕事始めるわよ」
「あっ…ママ、ごめん。もう少ししてから行く」

これも変
いつもだったら、すっ飛んで行くのに

プルルルル
プルルルル

「あっ!陸君、る、月が出るよ」

なに慌ててるの?
もしかして、誰かの電話を待ってるとか?
さっきから携帯離さないし

「月、誰からの電話?」
「滋おば様だった。夕方に翔君とももちゃんと一緒に来るって!ママに伝えてくるね」

ブルルル
ブルルル

あっ
月、携帯…
さっきまで、肌身離さず持ってたのに

やっぱり翔が原因かな
翔が来るって聞いて、すっごく明るい顔になったし
今掛かってきた携帯も、翔からかも

「あっ、月。さっき携帯なってたよ」
「えっ、ホントに?」

ふ~ん
そんなに待ってたんだ、そのメール
滋おば様からの電話の時よりも、一段と顔が明るくなって

「月、誰からのメール?」
「あっ…え~と…と、友達からだよ。う~んと…しゅ、宿題の事。な、何ページか解らなくなっちゃったんだって」

かなり動揺してるね
でもさ、別に隠さなくたっていいんじゃない?

「陸君、な、なに?」
「別に」
「な、なんか陸君ってさ、ホント見透かされてる気がして怖いよね」

って言う事は、隠して置きたい訳ね、翔の事

「そう?月、ママのお手伝いしなくていいの?」
「いっけな~い!行って来るね」