心の扉③-2


日本へ戻って来て1ヶ月

花沢類…花沢支社長の話題は耳にはするけど、まだ一度も会っていない
これだけ大きな会社だし、支社長が社内でウロウロしてるはずないから、すれ違う事もないし
それでも花沢類がここにいるっていうだけで、会社に行くのが楽しみで仕事も頑張れる

「牧野さん。大分遅くなってしまったね。私の車で送るから帰りましょう。牧野さんはどの辺りに住んでるの?」
「川島部長、自宅は歩いて数分ですのでお気遣い頂かなくても大丈夫です」
「へぇ~この近くに住んでるなんて凄いね。家賃が大変なんじゃない?」
「そ、そんな大したことは…あ、あの友人の家を間借りしているだけですので…そ、それでは失礼致します」

うわぁ~焦った
上手く誤魔化せたかな
普通じゃ考えられないよね
社会人になりたてのOLが一等地のこんな高級マンションに一人暮らしなんて

日本に戻ったら取りあえずパパとママの所へ行く予定だったのに、空港についたら道明寺財閥の迎えの車がきていて…

「楓社長より牧野様をお送りするようにと申しつかりました」

そう言って連れてこられたのがこの高級マンション
玄関を開ければ自動的にライトがついて、24時間いつでもお風呂に入れるとか、書斎&ベッドルーム、キッチンの説明をされてリビングに案内をされると

「楓社長より牧野様がお部屋へお入りになられた際にお渡しするように申しつかりました。それでは私は失礼致します」

そう言って帰ってしまった
渡されたのはこの部屋の登記識別情報通知書(権利書)と楓社長からの手紙

手紙にはこの部屋は道明寺財閥の危機を救った報酬だから受け取る事と、このマンションに花沢物産の関係者は住んでいない事が書かれてた
それとあたしが嫌がるだろうから、小さめの部屋にしたって…

高校生の時に1Kでお風呂もないボロっちいアパートに住んでいたあたしが言うのもなんだけど、確かに1LDKは一人暮らしには最適だと思う
でもね、ここは違うでしょ
リビングは20畳
寝室だって普通なら3部屋になるくらいに広い
って言うか、広さとか場所とかそんな事より、借りるならまだしも、この部屋を貰うなんて出来なくて、楓社長に連絡したら、花沢物産を辞めて道明寺財閥に入るならと言われてしまって…
道明寺に相談しても、直ぐにNYに戻って来いって取り合ってくれないし
仕方なくって言うのも贅沢だけど、ここに住む羽目になったんだよね

秘書だから川島部長次第で退社時間変わるお陰で、取りあえず今まで誰にもバレてはいないけど、今日はホント焦った
でも…
別に隠す事でもないのかな

はぁ~
まぁ~いいか
取りあえずお風呂に入ろ
贅沢すぎるこのマンションになかなか慣れないし、あたしには合わないんだけど
フフフッ
いつでもお風呂に入れるっていうのが唯一気に入ってるとこなんだよね