心の扉⑨-1


はぁ~
どうか花沢類とみずきさんに会いませんように・・・

よし!

諦めたとはいえ、やっぱり二人が一緒にいるところは出来ればみたくない
しかも朝からだなんて・・・

っていうか会わなくて良かったのに、なに落ち込んでるんだろう、あたし
うん、今日は幸先のいいスタートなんだから何もかも上手くいく気がする!

まずは川島部長に口止しないとね
会社の人達にバレないように内緒にしてもらわなくちゃ
あたしと花沢類・・・F4全員と知り合いだなんて知られたら仕事がやりにくくなっちゃうもんね

あれ!?
川島部長、もう来てる

「おはようございます。川島部長、こんな朝早くから出社されてどうしたんですか?」
「あっ、おはよう、牧野さん。昨日、色々考えてたら眠れなくなっちゃってね」

げっ!
も、もしや花沢類とあたしの事で!?

「あ、あの・・・き、昨日の事ででしょうか・・・」
「まぁ~確かに昨日はすっごくビックリしたけどね。まさか花沢支社長と牧野さんが知り合いだったなんて」
「す、すみません・・・」
「ハハハッ、別に謝る事じゃないよ。それにその事以外に色々あって眠れなかっただけだから」

あれ?
ラーメンを食べた後も何かあったのかな

「あ、あの・・・川島部長にお願いがあるんですけど」
「もしかして花沢支社長の事、内緒にして欲しいって事かな?」
「アハハ・・・よく分かりましたね」
「会社に入ってからも花沢支社長と連絡してなかった所を見ると、静かに仕事がしたいって感じかな」
「え~と、まぁ、はい・・・」

花沢類と連絡を取らなかったのは別の理由なんだけど

「それじゃ、内緒にする代わりに一つお願いしてもいいかな?」
「は、はい。何でも言って下さい」
「じゃ、遠慮なく」
「ど、どうぞ」
「僕の事、上司じゃなく、一人の男として見てくれないかな?」

へっ?

「牧野さん?」

何を言ってるの?
上司じゃなく男として・・・
そ、それってまさか

「お~い、牧野さん」

ハッ!

「な、なななにをこんな朝から言ってるんですか。か、川島部長、からかわないで下さい」
「ハハハッ!牧野さん、顔が真っ赤だよ」
「か、川島部長が変な事をい、言うから」
「ハハハッ、ごめん、ごめん。さぁ~仕事を始めよう。今日は超ハードスケジュールになるんだよね、優秀な秘書さん」

あっ、そうだった
スケジュール調整しないと!
明後日には花沢類の就任パーティーだから今日か明日しか打合せが出来る日がないんだよね



プルルル
プルルル

『類か、どうしたんだ』
『父さんに相談があるんだけど』

牧野が今、誰を好きだろうと俺の牧野への思いは変わらない・・・
クククッ
牧野、あんたやっぱり最強だね
諦めていて固く扉を閉めた俺の心をいとも簡単に動かしちゃうんだら

『就任パーティーで婚約発表しなくていい?』
『どういう事だ?』
『面倒くさいし、連日のようにマスコミに追われて、これ以上騒がれたくないんだけど』
『しかしな』
『こんなんじゃ、やる気出ないし、仕事に支障が出てもいいんなら別にいいけど』
『まったく類は・・・分かった。結城家には伝えておくから』
『ありがと』

クククッ
一応五年間、真面目に仕事して来たから、今俺が仕事しなくなると父さんが困るもんね

結城の方は父さんから話をしたら嫌とは言えないでしょ
あのお嬢様、日本に帰ってきた時よりも不服そうな顔をしそうだね
でも公にしない方があんたの為だから

もう10時
それにしても牧野遅いんだけど

「あの類様、もうかれこれ3時間になりますが、まだ待たれますか?」
「うん」

電話を掛けても出ないし、社内で話しかけたら嫌がるだろうと思って待ってんのに、牧野まだ働いてるの?

「すっごく遅くなっちゃった」

あっ、牧野の声

「悪かったね、こんな時間まで仕事させちゃって」
「いえいえ、こちらこそ遅いのに送ってもらっちゃって・・・すみません」

またあんた
ホント邪魔なんだけど

「あっ、類様。私の電話にみずき様から・・・」

なんでわざわざ運転手の電話に?

「類様にお掛けしてもお出にならないからと・・・すみません、出て頂けますか?」

あっ、牧野

「それではおやすみなさい」
「おやすみ」

何時間も待ってたのに、ホント最悪なタイミングで掛けてくるよ

「電話かして。もう家に向かっていいから」
「はい、畏まりました」

今日は牧野、疲れてるみたいだし、とりあえず顔が見れたから

『なに?』
『ごめんなさい、運転手さんの電話にまで掛けてしまって』

だったら掛けなきゃいいじゃん

『別にいいけど』
『あの・・・婚約の発表はしないって聞いて、いたたまれなくなって』

してもしなくても婚約してる事実は変わらないでしょ

『ごめん。今、マスコミにウロウロされると仕事に支障が出るから』
『そんなに・・・そんなに大切なお仕事なんですか?それとも別の理由で・・・』

結構鋭いじゃん、あんた

『内密に動いてるプロジェクトがあるから』
『・・・分りました。あのでも発表はしなくてもパーティーには類さんとご一緒出来るんですよね?』
『うん』
『良かった!安心しました』

悪いけど、あんたと出るパーティーはこれが最初で最後だから

『それじゃ、まだ仕事が残ってるから』
『はい、あまり無理はしないで下さいね。おやすみなさい』
『おやすみ』

パーティーでまたマスコミが騒ぎ出すから、終わって1、2ヶ月位の我慢かな

・・・ごめん
あんたは何も悪くないのに
でもやっぱりダメなんだよね、牧野じゃないと・・・



ピンポン ピンポン

あれ!?
こんな時間に誰だろう
まさか・・・花沢類

「はい」

やっぱりそんな事ないよね
でも管理人さんがこんな時間に何だろう

「すみません、夜遅くに。お荷物をお預りしていまして」
「あっ、すみません。直ぐに開けます」

げっ!
な、なに!?
こんなにいっぱい・・・

これは・・・道明寺から
それとこっちは川島部長!?
・・・花沢類からも

開けなくても想像はつくけど、たった1日のパーティーでどうやって3着も着るのよ
披露宴じゃないっつ~の!

でもどうしよう
誰から頂いたのを着ればいいんだろう
それに髪型とか化粧とかもどうしたら・・・
スーツで行こうと思ってたから予約なんて入れてないし

はぁ~
とりあえず道明寺にはお礼のメールをして、川島部長には明日言えばいいよね
花沢類には・・・
昼間電話が来てたのに出なかったから掛けづらいな
もう遅いし明日考えよう