運動会①


「つくし様、そのような事は私どもが…」
「気にしないで下さい。すっごく楽しみにしていた事なんで!でもすみません、朝から場所をお借りして…」 

ママってばすっごい張り切りよう
でもそれはそうだよね
この日の為に日本に帰ってきたんだから…
ただの一時帰国じゃなく、本格的にね


1年前…フランス

「陸と月も来年小学6年生になるのよね。フランスにいるから一度も出来なかったなぁ~お弁当を広げて運動会の応援。中学生になったら無理だもんね」

運動会ね、面倒くさいからそんなのなくていいんだけど

「つくしの手作りお弁当なら食べたい。日本に帰ろ」

はぁ?
ちょっとパパ、お弁当食べる為に帰国するの?
そんなのこっちで作って食べればいいでしょ

「ホントに?ありがとう、類!だったらやっぱり運動会には連帯感って大事だから、6年生の進級に合わせてにしない?」
「あい」
「フフッ!まずはお父様達に連絡しなきゃね。それと引継ぎもあるし…陸、月、これから帰国まで忙しくなるけど、日本に帰れるんだから少し我慢してね」

っていうか、ママが勝手に帰国したいだけでしょ
しかも運動会の応援がしたい為だけに

「はぁ~い!月もさっそく日本のお友達に連絡しなっくっちゃ!」

月まで喜んじゃって
でもまぁ~いつかは帰るんだろうから、俺は別にいいけどね
運動会っていうのが、ホント面倒だけど


僕達が日本に帰国するならって、もちろん想像はついていたけど、司おじさんトコもあきらおじさんのトコも日本に帰国
みんな世界規模の会社なのに、そんな簡単に決めちゃっていいのかな
それに別に一緒の日じゃなくてもって思ったけど、みんなして同日に空港に到着

ママ曰く

「優紀が一々帰国の度にお出迎えじゃ大変でしょ。それにみんな忙しい人達ばかりだからなかなか一緒に会えるって出来ないし」

パパ達は無理だろうけど、きっとママ達は何だかんだ言っては集るのは目に見えてるけどね
それにしてもやっぱりこの軍団はすごい
マスコミの数もしかも一般の人まで取り囲んじゃって
でも何だか若いコが多い気がする

「ねぇ~陸君、ものすごい人だよね。フフフッ、その中でも陸君が一番の目当てみたいだけど」

何言ってんの、月?

「どうして?」
「もしかして気がついてないの?周り見たら解るでしょ、陸君の名前が書いてあるプラカードや、ほら見て!陸君の写真付うちわ持ってる人が一番多いでしょ」

な、なにそのうちわ…

「月、何であんなのみんな持ってるの?」
「あれ、知らなかった?この間のカタログの時に、日頃の感謝を込めて応募者全員に誰のがいいか書いて貰って、プレゼントしたんだって!」

そんなの知らない
それにアイドルじゃないんだから、そんなうちわなんて…

「ママの発想?」
「ブッブ~!滋おば様だよ」

はぁ~
何となく想像できる…

「この間の人気投票もそうだったけど、今回も陸君が一番だったんだって!」

ふ~ん
でもそんなの興味ないし
ただこれ以上、うるさくなるのだけはちょっと勘弁して欲しいんだけど
今度は余計な事、考えないようにして欲しい、滋ばさん…

そしてもちろん、みんな揃って英徳初等科に転校
翔と月は同じクラスになったけど、他はみんなバラバラ
静かに勉強出来て、僕としては最高の環境
お気に入りの場所も見つけたし

「陸君!フフッ、やっぱりここにいた。教室にいないから絶対に非常階段にいると思った。ここって何か妙に落ち着くよね」
「月、どうしたの?」
「あっ、うん…え~と5時間目で決まるんでしょ。だから気合いを入れに来たの」

今朝、散々ママにプレッシャーかけられたのに、月まで…

「もしかしてママに言われたの?」
「ハハハッ…解っちゃった?だって陸君、面倒くさいからって真剣にやらなそうなんだもん」

まったく…
ママ達が気合いを入れて楽しみにしてるのに、やらない訳ないでしょ
クラス分けが決まった時、滋おばさん、学校に文句言ってやるって、ものすごく怒ってたんだけど、ママにバラバラの方が運動会燃えるわよ!って言われてコロっと転身
でもそのとばっちりがこっちに来たんだよね

「リレーの選手は何が何でもF4Jr.で固めるわよ」
「運動会最大に盛り上がる種目にしなくっちゃ!」

って勝手に決めてさ
こればっかりは実力がなきゃ無理なのに

「一応、真剣に走るけど、なれなかったら仕方ないでしょ」
「大丈夫!陸君がちゃんと走ればきっと速いって」

他人事だと思って…
月と翔はいいよね、いち早くリレーの選手に決まってさ
総太やつばさだって足速いから余裕だろうし

「さぁ~どうだかね」

今まで真剣に走った事なんてないんだから

「陸君、何気にスポーツ得意じゃない!大丈夫だって」

月、何気にって余計なんじゃない?
バスケとか球技なら楽しくていいけど、走るのって正直面倒くさい

「それなりに頑張るから」
「うん、結果楽しみにしてるね!じゃ~ね」

ホント最後までプレッシャーありがと、月