「いつからかだったのかな」
「エッ!?」
たしか初めて会ったのは非常階段だったっけ
いつも大きな声で叫んでたよね、クククッ
「は、花沢類、なに笑ってるの?あたし変な事言ったっけ?」
「牧野が司に赤紙貼られたの思い出してた。あれで牧野の学校生活が波乱万丈になったんだよね、クスッ」
今もなお、継続中だけど
「ホントそう!道明寺のせいであたしがどれだけ大変な思いをしたか。あの頃の道明寺って、我が儘で自分勝手で、ホント嫌なヤツだった」
「クスッ、そうだね。手が着けられないくらい荒れてたから。でも牧野と出会って変わったんだよね、司」
俺もだけど
「フフッ、根性叩き直してあげたからね!」
「司と牧野、見てて飽きなかったよ、クスッ。でもそうしてる内に司の事が好きになっちゃったんだよね、牧野」
「花沢類…」
最初は俺の事が好きだったのにね
もっと早く、牧野への気持ちに気がついていたら
「牧野が司と付き合い始めて気がついたんだ、牧野が好きだって。でも牧野が幸せでいつも笑っていてくれるなら、牧野の傍にいられるなら、それでいいと思ってた」
そうやって自分自身に言い聞かせてたのかもしれない
司は親友だから
「それじゃ~もう葉山の時は…」
あの葉山の夜に本気で司から牧野を奪うって決めたんだよね
「もちろん葉山に行った時も、今も変わらず、ずっと牧野が好きだよ」
「は、花沢類…あ、ありがと///」
「クスッ、牧野のありがとうは聞きあきたよ」
「ハハハッ、花沢類のそのセリフだって」
こうしてるとホント変わらないのにね
どうしたら心を開いてくれるのかな
クククッ、ホント頑固なんだから、牧野は
「あっ、そういえば花沢類、この指輪返さないと。こんな素敵な指輪を着けさせてくれて、本当にありがとう!ハハハッ、また言っちゃったね、ありがとうって」
やっぱり牧野って…
クスッ、鈍感
普通気がつくでしょ
「返されても俺の指に入らないから、ホラね」
「ヘッ!?何してるの、花沢類。入るわけないじゃない、女の人の指輪なんだから」
クククッ、ホント気がつかないんだ
「女の人の指輪じゃなくて、牧野の指輪なんだけど、コレ」
「あ、あたしの!?」
男の俺が指輪なんか持ってるわけないでしょ
しかも牧野のサイズピッタリの指輪なんかさ
「あい」
「きょ、今日、あたしが着ける為にわざわざ買ったの!?」
一応、婚約指輪のつもりだったんだけど、今、牧野に言ったら、着けてくれなくなっちゃうからね
「出来ればずっとしていてくれると嬉しいけど。それに牧野が指輪をしてないと俺の印象が悪くなるかもしれないしね」
「な、なんで!?」
「マスコミもパーティーに来た人も、その指輪、婚約指輪だと思われてるからね。牧野が着けていなかったら、想像つくでしょ」
「あっ…そっか。婚約破棄したとかまた騒がれちゃうかもしれないよね…でもこんな高価な指輪、普通になんて着けられないよ」
もう一押しかな、クスッ
「高価な指輪でも、着けないで閉まっておいた方が勿体ないんじゃない?」
「そっか、そうだよね、勿体ないよね。ん~それじゃ、取り敢えずはマスコミが落ち着くまで、傷つけないように大切に着けてる」
相変わらず勿体ないに弱いんだ、クスッ
でもありがと
嬉しいよ、牧野
「あい」
こんな高価な指輪、ホント貰らっちゃっていいのかな
花沢類もさすがは御曹司だよね
こんな高価な物をポンとプレゼントするなんて…
今は道明寺の傍にいるから高価なプレゼントの渡しあいは大分見慣れたけど、やっぱり一般庶民のあたしの場合は考えられないと言うか、あり得ないつ~の!
でも…
花沢類にとっては意味のない物かもしれないけど、あたしにとっては…
一生大事にする
ありがとう、花沢類
大きな心の支えが出来たよ
「12時か、タイムリミットだね。ホントはもっと一緒にいたいけど、牧野の秘書バージョンは冷たくてズキッとくるからね、クスッ。おやすみ、牧野」
昔と変わらないね
帰り際にあたしの頭をクシュってするとこ…
エッ!?
も、もう行っちゃうの?
イヤ…
もっと一緒にいたい
「秘書には戻らない」
「ん?」
あたしのわがままだって解ってる
「…行かないで」
「牧野?」
でもお願い…
もう一度だけ…
もう一度だけ、花沢類の温もりに包まれたいの
「…花沢類の傍にもっといたい」
あっ…
ん…んん…
「嬉しいよ、牧野」
花沢類が好き
この気持ちは傍にいる事が出来なくても一生変わらない
「傍にいて、花沢類…」
あたしの大好きな天使の微笑み
出来るならいつも傍で見ていたい
もっと話がしたい
もっと抱きしめられたい
もっともっとキスがしたい
最後だから
今日だけだから
お願い…夢を見させて