別れの後①


『行かないで』

その言葉が言えず、大切な人を二度失ってしまった

一度目は…

とても行かないでなんて言える状況じゃなかった
NYに行ってしまえば、それは別れを意味する事だったのに…

色々な事があって、ようやく道明寺と付き合い始めた矢先に、道明寺のお父さんが倒れてしまって…
命には別状なくてホッとしたけど、その事で株価が急落して道明寺財閥が窮地に陥ってしまった

滋さんとの政略結婚

道明寺財閥を救うすべは、その道しかなくなってしまったんだよね
何度も何度もごめんって滋さんは謝ってたけど、最後まで涙を見せずにあたしは精一杯の笑顔でNYへ行く二人を見送った

そしてそんなあたしを救ってくれたのが花沢類

ずっとずっとあたしの傍にいてくれて、支えてくれた
花沢類がいてくれたから立ち直れたし、またあたしは人を好きになる事が出来た
もしかすると本当はずっと花沢類の事が好きだったのかもしれない
今もこうして道明寺ではなく、花沢類を思い続けているのだから

二度目は・・・
ずっと傍にしてほしかった花沢類

『ごめん、牧野。俺、フランスへ行く』

そう言われた時、花沢類も道明寺との時に散々思い知らされた大企業の御曹司なんだと改めて思った
やっぱりあたしとは不釣り合い・・・
行かないでと言う勇気が出なかった

フランスへ行く花沢類の見送りに行った時、いつものようにあたしの髪をクシャっとして覗き込んだ

『・・・じゃ~牧野、行ってくる』

あの時の花沢類の天使の微笑みは今でもずっと目に焼きついてる

あれから3年・・・

道明寺は滋さんを連れて帰国する
明日、婚約する花沢類のパーティーへ出席する為に・・・