月の特技②


「月、そのお洋服よく似合うね、もう一度立って見せてくれないか?」
「うん!」

月がクルっと回って、お祖父様に見せる
お祖父様、自分で言っておいて即、撃沈…

「陸もお祖母様に見せて頂戴」

僕はクルっとはしなかったけど、立ち上がって見せた

「母さん、つくしが作ったんだよ」
「まぁ~つくしさんは何でも出来ちゃうのね!」

ママは照れて顔が少し赤くなってる
ククッ
ママって、誉められたりするとすぐ照れちゃうんだよね
僕が言うのもなんだけど、すっごく可愛い

「仕事をしていないので、時間があって・・・趣味程度なんですけど」
「それにしても良く出来ているよ、デザインも良いし、そのまま売れるんじゃないか?」

ますます赤くなるママ…
ククッ

「司んトコの翔とかつばさ、総太にも作ってるけど、みんな評判良いんだよね」
「み、みんなで、持ち上げないでよ///」
「つくしさん、デザイナーになっちゃえば?」
「ななな///滅相もない…」

でもママ
今日はきちんとした服だけど、普段着る服はすっごく動きやすいし、カッコイイし
僕、とても気に入ってるよ


翌日、朝からワイドショーが、昨日の僕達の映像を流している
まぁ~これもいつもの事

でも今日は…内容がちょっと違ってる
僕達が着ている服が、どこのブランドか解からないって騒いでいるみたい
翔とかが前にママの作った服を着ている映像も流れてる
ママはあっけらかんとして

「解かる訳ないじゃないねぇ~あえていうなら『つくしブランド』かしら?ハハハハッ!」

なんて言ってたけど
その頃、ワイドショーに沢山の問合せの電話が殺到していたみたいなんだよね
洋服のブランドが知りたいって…

ママは全然気にしてなかったけど、ワイドショーってすごい…
一夜にしてママが作った服と判明
今度は花沢物産に問い合わせが殺到した
それでもママはいつもと変わらず

「みんなも自分で作ればいいのにねぇ~高いお金出して買うなんて勿体ないじゃない」

といたって呑気…
でも世間はママを放っておく訳がなかった

「つくしさん、悪いが会社の方へ来てもらえないか?」

僕達が幼稚舎から帰る車の中で、ママの携帯にお祖父様から連絡が入った

「何の用だろうね?陸、月も一緒に行く?パパが仕事してるトコ見れるかもよ!」
「うん!るな、パパがお仕事してるトコ見たい!」
「フフッ、カッコイイわよぉ~」

自分の夫をカッコイイなんて…普通言わないよ、ママ
でもまぁ~
僕もパパはすっごくカッコイイと思ってるけどね

車の中でパパ自慢が炸裂して止まらない…
ママも月も真っ赤な顔をしながら、まるでアイドルの話でもしているかのようにキャピキャピと…

でも気がついてる?
2人ともお祖父様と月が会うんだよ
パパがどうなるか解かるでしょ

カシャ!

件名
パパの話をして真っ赤になる2人

パパに送信っと
これで少しは大丈夫かな!?

会社に着いた
堅苦しい挨拶とかされるのかと思っていたら、みんな軽く頭を下げる程度で、ママには気楽に話しかけてくる
お祖父様の秘書の相場さんが近づいてきて

「急に及びたて致しまして、申し訳ございません」
「そんな畏まった言い方は・・・以前のようにお願いします」

少し赤くなりながらママが言った

「では、お言葉に甘えて…つくしさん、社長室に行きましょうか」
「あっ…はい…あの…」
「どうしたんですか?」
「え~と・・・こ、子供にパパが仕事している所を見せたいので少しいいですか///」
「クスクス、専務が仕事をしている姿を見るのは、プッ!久しぶりですからね、どうぞ!」
「ハハハッ…あ、ありがとうございます///」

そぉ~と秘書室から盗み見ている2人…
なんかすっごく怪しい人
しかもまた2人とも真っ赤な顔してキャ~キャ~言ってる
こっちが恥ずかしいよ…
って言うより、何で僕はキレイなお姉さま達に、囲まれなきゃなんないの?

「チビッ子専務よ!!!」
「すっごく可愛い!」

頭を撫でられたり、手を握られたり、まるで人形状態なんだけど…
ほら、あまりにも騒いでるから、パパが気付いちゃったじゃない

「つくし、月、何でここにいるの?」

天使の微笑みで、パパが入口に近づいてくる
周りにいた秘書のキレイなお姉さま達が

「キャ~!花沢専務の笑顔よぉ~」
「滅多にお目にかかれない…レアよレア!」

って叫んでる
ママと月にしか見せない天使の微笑み…
ホント、レアかも

「ククッ、陸、大変だな!さっきは写メありがと」

パパがムスッとしている僕の頭をクシャってした

「つくしさん、もうそろそろ行きましょうか」

相場さんが声をかける

「なに?つくしもしかして…」
「うん、お父様に呼ばれてて」

うわぁ~!
一瞬にして不機嫌顔

「ねぇ~パパも一緒に行こうよ」

月がいつもの上目遣いおねだりで、クククッ
パパ、撃沈
パパの秘書の鈴木さんに

「ちょっと行って来る」

というと、みんなで社長室に向かった