代償の果てに①-3


「ね、ねぇ~花沢類…あの~、え~と…手…///」
「イヤ?」
「イ、イヤじゃないけど///」
「牧野の手、暖かいから」
「そ、そう!?で、でもさ、だからってね///」

ホントそんな顔されると、司と付き合ってる事、忘れそうになるよ

「ククッ、牧野にマフラー貸したから、牧野の手と交換」

牧野を覗き込むように答える
もちろん微笑み付きで

ククッ
ごめんね、牧野
だってまだ手を繋いでいたかったから

いつものように、たわいもない話をしながら歩く
パパの就活の話とか、今日一日にあった事とか
今日のバイト先での話は

『イチゴ大福を一つ下さい。そのままで…今食べますから』

ドスの聞いた声で注文した強面のおじさんの話

ねぇ~牧野
他に話があるんじゃない?

「牧野、そこの公園行こ。今日は星がキレイだから、もう少し付き合って」
「ホント…東京でも冬は星がこんなに見えるんだね」
「牧野、そこ座ろ。あと、携帯かして」
「エッ!?あたしの携帯?花沢類、なにするの?」

そんな覗き込まなくても、ちょっと待ってて

「はい、牧野」
「このストラップ…花沢類と同じ…」
「牧野、いつも俺の携帯見る度にキレイだよねって煩いから同じの作らせた」
「作らせたって…そんな悪いよ、それだしこのキラキラしてるのは本物でしょ?そ、そんな高価なもの貰えないよ!」
「お祝いだからいいんじゃない?」

ククッ
自分の事なのに…
牧野のその顔…プッ!

「ちょっと花沢類!なんで笑ってるのよ!」

今度は怒った顔

「ククッ、今日、英徳大学の特待生、合格したんでしょ」
「あ~!そう、特待生になれたんだ、あたし!花沢類に報告しなきゃって…わ、忘れてた、ハハハッ」

次は焦り笑い
…クククッ、ホント牧野は

「良かったね、牧野。おめでと」
「ありがと、花沢類。これで何とか大学に行けるからホッとしたよ!でもまだパパ、就活中だからバイトは続けなきゃいけないけどね」

ククッ
世界規模の御曹司と付き合ってるようには見えないよね
まぁ~
人に頼るような牧野じゃないけど

「まだまだ一家の大黒柱だね、牧野」
「ホント、いつになったら楽できるか…夢のまた夢って感じ」

あの時、司についていけば夢が叶ったのにね

「牧野、もうそろそろ帰ろっか」
「うん!って、花沢類…このストラップ、いくら合格祝いだからって、やっぱりこんな高価なもの貰えないよ」
「返されても同じ物が2つもあったって使わないし、勿体ないから。俺は牧野と同じ物が持てて嬉しいのに、牧野はイヤなの?」

勿体ないって言葉に弱いよね、牧野

「ホント、花沢類はそんな悲しげな顔してズルイんだから…じゃ~今回はお言葉に甘えて、ありがと!大切にするね。」
「ククッ、どう致しまして」
「でも本当にキレイだよねぇ~あたしアクアマリンって好きなんだ。花沢類の誕生石だよね」
「うん」

クロスの中央に大きめのアクアマリン
十字の部分には小さいダイヤがはめ込まれている
それは俺がつけていた物
新しく作らせたのは、クロスの中央にトルコ石…牧野の誕生石
俺が今つけている

「牧野様」


この人、たしか…
司のトコの…
半年も牧野に連絡もよこさず、この人送りつけて…
司、何考えてんの

「に、西田さん…」
「牧野様、類様、ご無沙汰をしております」
「ご、ご無沙汰をしてます…あ、あの…」
「司様よりお手紙を預かって参りました」

手紙?
司から?

「西田さん…ど、道明寺は…」
「お元気でいらっしゃいます。きっと中をご覧頂ければお解りになるかと…では、私は失礼致します」

牧野、固まっちゃってる

「ま~きの」
「エッ!?あっ!ヤ、ヤダ…ハハハッ、一体今さら何、手紙なんかで………」

そんな真剣な顔してどうしたの、牧野
司、何って言ってきたの

牧野は手紙を読み終えると、目をそっと閉じた…
ため息を一つつき、俺を見ると笑顔で話し出した

「花沢類!お願いがあるの」

急にどうしたの、牧野

「なに?」
「明日…」
「ん?」
「明日、花沢類の1日をあたしに頂戴!」