代償の果てに③-4


フン!類のヤツ
早々に牧野に手を出しやがって
まずはこれで、俺様と牧野の噂を消したってトコか
まぁ~逆の立場だったら、俺様も同じ事をしたけどな

コンコン

「牧野です。支社長、本日のスケジュールですが」

って、やっぱり…ね

「牧野、昨日は俺様の代わりにって言ったはずだよな。どういう事だ」
「ただの挨拶です。海外では普通だと思いますが。記事が嘘だという事も支社長が一番お解りのはずです。時間がございませんので仕事に戻りたいのですが」

模範的な返答だな、牧野

「フン、まぁ~いい、午後からは社長につくんだったな」
「はい、まずはこちらの書類を…」

昔の牧野からは想像出来ねぇ~な
まったく表情に出さねぇ
仕事の時はもちろんの事、プライベートでも類の話になると仮面を被りやがる

フッ、さすがババァと西田だ

「おい牧野、この資料誰が作った?見にくい、もう一度やり直せ」
「はい、こちらに作り直してございます」
昨日はハードだったくせに完璧だな、牧野
「田中さん、少し代わって頂けますか」

今度は出来ねぇヤツの指導か
自分の事で精一杯のはずなのに牧野らしいな
それにしてもあいつ、教わってるくせになに牧野見て赤くなってんだ

「牧野さん、これなんですが…」

次は女か
そいつにもバカ丁寧に教えるのか?

「牧野さん、すみません」

つ~か、次から次へと…
あいつはいつ戻ってくんだ?

「牧野さん、午後からの準備もおありでしょう。ここは私がやりますので、お戻り下さい。支社長がイライラしてますよ」

エッ!?
ヤダ、道明寺ったら、なに青筋立ててんのよ

「田中さん、すみません。ありがとうございます」

フン
ようやく戻って来やがった
ホント変わらねぇな
自分の事より他人を優先するトコが
フッ、類の事にしてもそうだしな

類が戻るまで一ヶ月か…

暇さえあれば寝てやがったヤツが、牧野の事になるとこうまで変わるとはな
フン、それだけ本気だっていう事か

でもな、類
お前に負けず、俺様も本気だぜ
牧野に対してはな

「おい、牧野、今日のランチは会食じゃねぇな。一緒に食おうぜ、メープルにでも行くか」
「すみません、私は社員食堂で頂きますので」

はぁ~!?
俺様の秘書のくせに、社員食堂だと

「んな貧乏くせ~事してんじゃねぇ~よ。今日はただでさえ注目されてんだろうが、こんなクソ雑誌に乗りやがって」
「何もやましい事はありませんから普段通りさせて頂きます。それから会食ではないのですが、美作部長と西門様がお昼にお見えになるそうです。時間があまりござませんので、こちらに食事の手配をしてございます」

あきらと総二郎が来るだと
チッ

「牧野、社員食堂なんか行かねぇ~で、お前も一緒にどうだ?フッ、あいつら、俺様よりお前と色々話がしてぇ~んじゃねぇ~か」

俺様と牧野の関係が知りてぇ~んだろうからな

「私にはゆっくり話ながらお昼を取っている余裕はありませんので。後の事は田中さんにお願いしてございます。では私はこれで」

フン
まぁ~今日のとこはいいだろ
どうせあいつらの事だ、類が戻って来るまでしつこく来るだろからな

コンコン

「支社長、美作様と西門様がお見えになりました」
「あぁ」


一体なんなのよ、道明寺は!
今日はただでさえ、いっぱいいっぱいなのに、美作さん達と食事しろなんて
ホント性格悪すぎ!

美作さん達もよ
こんな記事が出て直ぐ来なくたっていいじゃない
ただでさえ日本に帰って来て、色々と気が張ってるのに
そもそもいないと思ってた花沢類が、日本にいたのが原因なのよ!

「この席、ご一緒しても宜しいですか?」
「あっ、はい…どうぞ…」
「ありがとう」

パーティーの時といい、空港の時といい、ホント花沢類には振り回されっぱなしで…

ん?
ここの社員食堂の料理…
すっごく美味しい!

「ここのお料理、とても美味しいね。さすがは道明寺財閥って感じ」
「えぇ、そうですね…あの、秘書課の牧野さんですよね?ここは一般社員の食堂なんですが…重役専用の食堂に行かれた方が…」

あ~そういえば、道明寺が重役専用の食堂があるって言ってたっけ
俺様はんなトコで食わねぇけどなって

「フフッ、昼間からナイフとフォークで気取って食べても疲れちゃうじゃない?やっぱりお箸で和食っていうのが一番よ!」
「そ、そうですね…あのでも…牧野さん、すごく注目されてますが…」

エッ!?
あっ、ヤダ
忘れてた…花沢類との事

「ハハハッ…で、でもね、私も一般庶民だからこういう所の方が落ち着くんだよね。あ、あの私の事は気にせず皆さんお食事して下さい」

出来るなら、会食がない日はここで食べたいんだけどな
はぁ~
いつになったら、この噂なくなるんだろ

「あの…失礼かもしれませんが、牧野さんって綺麗で仕事が出来るってイメージだったので、もっと気取った方だと思ってたんですけど、気さくな人なんですね」

あたしが綺麗!?
仕事が出来るって…
いやいや全然違うから!

「秘書をしてる時は気取らなきゃいけないけど、ご飯を食べている時くらい、普通にしたいじゃない?あっ、もう行かないと。また食べに来るから今度も是非一緒に」
「はい!喜んで」

注目されてるって気がついた時は、どうしようかと思ったけど
結構、大丈夫なんじゃない?
フフッ、料理も美味しかったしね