心の扉⑧-3


「つくしさん!やっぱり類さんもいらしたのね。下に類さんの車が停まってたからもしかしてと思って」

み、みずきさん…と川島部長

「つくしさんと同じマンションに住んでるって徹さんに聞いて本当にビックリしたわ。でもやっぱり私とつくしさんはお友達になる運命だったのね」

私はやっぱり花沢類を諦めなきゃいけない運命だったんだ…

「下に支社長の車があったからきっと牧野さんの家にいるんだろうと思って来てみたんだ」

花沢類にホントの事を打ち明けようとしたらみずきさんが現れるなんて…

「つくしさん?」

やっぱり言ってはいけないって事だったんだよね…

「牧野さん、どうしたの?もしかして深刻な話をしていた最中だったのかな」
「エッ?あっ…そ、そんな花沢類と深刻な話なんてないですよ!お、お二人が来たのでビックリしちゃって…アハハハ」
「ふふっ、つくしさんって昔は類さんの事をフルネームで呼んでたのね」

あっ・・・ヤダ、さっきまで二人きりだったから
き、気をつけなきゃ

「す、すみません」
「謝る事じゃないわよ、つくしさん。何か変わってて私もこれからフルネームで呼ぼうかしら」
「帰る」

エッ!?
は、花沢類?

「お二人が来たばかりなのに、は、花沢支社長、お、お茶でも・・・」

そ、そんな睨まなくても

「フルネームは牧野だけだから。帰る」
「あっ、待って類さん。つくしさん、ごめんなさい。また今度ゆっくり伺うわ」

きっとみずきさんの部屋に行くんだろうな
はぁ~
また朝会わなきゃいいけど

ぐぅ~
キュルルル

ずっと浮沈みが激しくて急にお腹が空いてきちゃった
そういえば全然食べられなかったからな

「ハハハッ!牧野さん、ラーメンでも食べに行こうか」

へっ?
か、川島部長!?

「もしかしているの忘れてた?」
「アハハ・・・すみません」
「ひどいな。それじゃ、お詫びに付き合って」

つ、付き合う!?
な、なんであたしが川島部長と!?

「あのえ~と・・・」
「ラーメンだよ。慌てて店を出てきたから殆ど食べてなくてね」

あっ、ラーメンね
っていうか川島部長がラーメン!?

「そんな庶民的なものを食べるんですか?」
「ハハハッ、庶民的って。結構好きなんだけどって言ってもあまり食べる機会がなくてね。さぁ、行こう」
「はい!」

とりあえずは腹ごしらえしないとね!
これからも雑草パワーで乗り切らなきゃ行けないんだから
でも・・・
昔と変わらなかったな花沢類
相変わらずマイペースなところも、あの優しい顔も、抱きしめてくれた腕も・・・もうそれで十分
心の扉をかけ直さないと
そう決めてたんだから・・・

「牧野さん、ぼぉ~としてたらのびちゃうよ」
「は、はい。頂きます!」

それにしても川島部長ってホント不思議な人だよね
セレブなくせにズルズルとラーメン食べちゃって
こんな所、会社の人が見たらビックリするだろうな
・・・あ~!

「か、川島部長!呑気にラーメンなんか食べてる場合じゃ、パーティーの打合せをしないと」
「明日でいいんじゃないかな。優秀な秘書が何とか時間を調整してくれるよね」
「はぁ~何とかやってみます」
「それじゃ、食べ終わったら送るよ」


ピピピッ  ピピピッ

『みずきか』
『ふふっ、今日はありがとう。ずっと退屈だったから、とっても楽しかったわ』
『どう致しまして。今、牧野さんを送ったところだよ。花沢支社長は帰ったの?』
『部屋にも寄らずにそのままね』
『そうか、分かった』