代償の果てに⑤-1


ホントNYに着いて直ぐからめちゃくちゃ超人的スケジュールで、アッという間に一週間たってしまった
楓社長はやっぱり魔女なんじゃない?
そうでなきゃ、こんなスケジュール、何十年もこなし続けられないって!

でもNYに来て良かった
毎日ホントにものすごく忙しいんだけど、ホッとしてる
日本に帰って数日の間に、ホント色々ありすぎて、いっぱいいっぱいだったし

NYには五年間住んでたから、慣れてるというのもあるけど、道明寺がいないから…
心が解放された感じ
でもまた戻ったら、花沢類のパートナーをしなきゃいけないし、NYにいる間に心の準備をしておかないといけないよね

フフッ、あのビー玉の目で見られちゃうと、やっぱり弱いから
出来るだけ関わらないようにって思っているけど、花沢類の傍にいられるのは、正直すっごく嬉しい

この間パーティーなんか、花沢類に会えただけで、すっごくドキドキして気になって
フフッ、片想いの中学生みたいに目で追っちゃってたな
花沢類、優しい眼差しも、話し方も昔のままだった
マイペースなトコもちっとも変わらないし
と、突然抱き締めるトコとか
いきなりキスするトコ///

ビックリしたけど…
嬉しかった

何だか…
葉山に行った時みたいだった
ムリだと解ってるけど、もう一度あの頃に戻れるなら…花沢類、あなたの傍にいたいよ

思い出さえあれば大丈夫だと思ってた
でもこんなに苦しいなんて…
こんなにも好きだったなんて

花沢類…
あなたが忘れられないよ
夢の中でもいいから花沢類に会いたい

ごめんね、道明寺…

日本に戻ったら、いつものように道明寺を支えるから、NYにいる時だけ…道明寺がいない時だけ、花沢類を好きでいさせて


『三条と申しますが、滋さんはいらっしゃいますか?』
『いつもお電話を頂きまして申し訳ございません。本日も外出しておりまして…』
『解りました。またお電話致します』

昼間はいるのに、夕方に電話すると決まって外出なんて…
わざと電話に出ないか、もしくは本当に外出しているか
気になって使用人に道明寺邸を見張ってもらっているけど、業者の車やお手伝いさんの車とかは出入りしてるんだけど、滋さんが乗りそうな車は出て来ないって報告ばかり
夜の報告では、先輩の運転する車に道明寺さんが乗っていたってあったけど…

滋さん、夜になるとマンションへ二人が行ってしまうから、わざと電話に出ないのかもしれない
昼間、遊びに行った時は、いつもと変わりなくケーキを食べながら明るく話をしていたけど、夜になるとやっぱり辛いんだろう

コンコン

「お嬢様、使用人より報告書が届いております」
「はい、ありがとう」

またいつもと変わりはないと思うけど…
ふ~ん、そういうことね

いつも朝と夕方にマンションを往復している使用人の車の後部座席に、今日たまたまチラッと滋さんらしい人物がが見えたって
マスコミが煩いからいつもそうやってマンションに行ってるって事か
でも、だとしたら先輩的にっていうか、普通はあり得ないんだけど

三人で一緒に住んでるなんて

今、先輩はNYに行っていないから、今日だけマンションに行ったのかもしれない
でもそうなると毎日夕方にはいない理由が解らない

そういえば確かこの間ナンパして来た人が、あのマンションに住んでいたと思うんだけど…あった、名詞

ピッピッ!
プルルルル…

『もしもし私、三条桜子と申しますが』
『さ、桜子さん!いや~お電話頂けるなんて嬉しいです』
『良かった!桜子の事、忘れてたらどうしようかと思いましたわ』
『忘れるはずないじゃないですか!桜子さんにもう一度お会いしたくて、ずっと連絡を待っていたんですから』
『本当に!?嬉しい!桜子、明日会いたいな!でもそんな急にじゃダメですよね?』
『何がなんでも会いに行きます!』
『ありがとう!では明日、楽しみに待ってます』

ピッ!

はぁ~
まったく先輩のせいで…
きっちり返して頂きますからね、花沢さんと先輩に!


ピピピッ!ピピピッ!

『なに、あきら?俺、眠いんだけど』
『おいおい、せっかく電話してやってるのに相変わらずだな』

当たり前でしょ
今、何時だと思ってんの?

『あきら、こっち夜中の2時なんだけど』
『おっ、悪りぃ~、時差気にしないで掛けちまった』

クククッ、司みたい
でも何かあきららしくない

『牧野の事?』
『さっき、桜子から電話があったんだけど、もしかすっと本当にあのマンションで三人で暮らしてかも知れないぜ』

さすがは三条、何か調べたんだ

『どういう事?』
『いつもマンションに食材とか運んでる使用人の車に、今日隠れるようにして大河原が乗ってたらしい』

ふ~ん
婚約者なんだから、堂々としてればいいのに
コソコソするのは普通、牧野の方でしょ

『牧野が今、NYにいるからなんじゃない?』
『そうかもしれないからって、桜子がきちんと調べるって言ってたけどな』

ん~何となく…

『あきら、三条の事、ちゃんと見てあげた方がいいかも』
『あ?あぁ、解った。それより類、これからどうすんだ?』
『何が?』
『本気で司から奪うつもりなんだよな?あんな状態でも司の傍にいるんだぜ、牧野の気持ちが司にあったらどうすんだよ』

クククッ、それはないと思うよ

『大丈夫でしょ』
『随分と余裕だな、類。もしかすっと牧野がNYに行く前、何かあったのか?』

あきらも総二郎もそういう事に関しては…
でも教えないよ、牧野との大切な思い出だからね

『別に』
『そっか?何か怪しいけどな。まぁ~今日は遅い時間だし、また今度ゆっくりな!んじゃ~何か解ったら連絡すっから』

今度は夜中じゃなくね

『うん。あきら、ありがと』

ピッ!

ふぁ~眠い
牧野が司と離れてNYにいるって聞いただけで、ここ最近よく眠れるんだよね
クククッ、牧野の夢が見れたらいいんだけど


おいおい類の言った通りかよ
桜子、一人で突っ走って…
大丈夫なのか、その男
桜子の目的はこのマンションだからって、よく住んでるヤツ見つけたな
合コンしまくってたのか?

でもこうやって見ると桜子もなかなかだよな
顔はある意味バッチリだし、スタイルもいいし
まぁ~俺らの前じゃ、今更そんなブリブリ見せねぇ~けどな

おっと桜子…もしや
指紋認識登録してんじゃ…

ホントすげぇ~よ
まさしく総二郎と俺の女バージョンだな
相手を落とすのは天下一品だ

でもな、やっぱり桜子は女なんだから、ホラ見ろ
そんなマンションの入口で『はい、さようなら』って訳いかねぇ~だろ
つ~かよ、お前、そんなに強く腕掴んで、桜子痛がってんじゃねぇ~か

「桜子!」
「み、美作さん!?」
「エッ!?もしや美作商事の…桜子さん、こんなスゴい方とお知り合いなんですか?」

お前、驚いてないで、まずは桜子を離せって

「えぇ…あの…高校の先輩で…」
「迎えに来たぜ。今日はこのマンションじゃなくて、道明寺邸で集まるってよ。ほら、行くぞ」
「あっ、ちょっと美作さん待って」

おいおい最後まで抜かりないな、桜子
手を握られて耳元で囁かれたら…
大丈夫だろ、そいつ絶対に指紋認識消さねぇ~よ

「すみません。お待たせしました、美作さん」
「あっ、君、ラブラブなとこ悪かったね。今日は約束してたから桜子、借りるよ」
「いえいえ、どうぞ!どうぞ!桜子さん、また明日」
「はい!明日、楽しみに待ってます」