代償の果てに⑩-1


「つくし~!二人とも絶対に幸せになろうね」
「う、うげっ!し、滋さん…く、苦しい」
「ハハハッ、ごめ~ん!だってつくし抱きしめるの久しぶりなんだもん。つくしってホント抱き心地いい!」

大河原、相変わらずだね
でも少しは手加減してして欲しいんだけど

「滋、いい加減にしろ。類が睨んでるぞ」
「ど、道明寺…あ、あの…」
「話は後にして、まずは二組の結婚を祝って乾杯しようぜ!ほら牧野、シャンパン持って」

あっ、あきら、牧野は…

「牧野、そのシャンパンは俺に頂戴。牧野はこっちね」
「オレンジジュース?あ、ありがと、花沢類」

クククッ、ホント自覚がないんだから

「では、司のせいで散々振り回されましたが」
「余計な事言うな、総二郎!さっさと乾杯しろ」
「まったく…大河原、結婚したんだからこの俺様なんとかしろよ」
「任せておいて、ニッシー!」

案外直っちゃたりするかも

「それではようやく結ばれた二組の結婚を祝って乾杯!」

司のせいで随分遠回りしちゃったけど、やっぱり牧野には笑顔が一番似合うね

「牧野、ちょっと来て。一応、父さんと母さん、紹介するから」
「エッ!?あっ、うん…」

急に強ばっちゃって、まさか今更緊張してるんじゃないよね

「どうしよう…何も挨拶もせずにいきなり花沢類と結婚しちゃって…きっと良く思われてないよ」

クククッ、ホント牧野って
ウェディングドレスも指輪も用意してたんだから、最初から認めてるって普通解るでしょ

「牧野、大丈夫だよ、クスッ」

フフッ、懐かしいね
花沢類があたしの頭をクシャってするの
何だかホッとする

「つくしさん!」
「お、お母様」
「類のせいで今まで辛い思いをさせてしまって、本当にごめんなさいね」

今まで辛い思いって…
今までの事、知ってるのかな

「母さん、俺じゃなくて司のせいでしょ。なかなか牧野を諦めきれなかったんだからさ」

そ、それはないよ
あたしの花沢類への気持ちに気がついて、その後直ぐに滋さんと婚約したんだから

「まぁ~こんな素敵なお嬢さんなんだ、仕方がないだろう。しかもあの頃の類になんか渡したくはなかっただろうからな」
「司にこんな事されなくたってちゃんとしたよ。牧野と一緒にいたいからね」
「どちらにしても、こうしてつくしさんと結婚出来たんだから本当に良かったわ!」

え~と、もしかして…
お父様もお母様も最初から何か知ってた?
っていう事は、花沢類も最初から知ってて…

「ククッ、類。つくしさんにきちんと説明した方がいいぞ」
「牧野、そんな睨まなくっても、クスッ。ちゃんと説明するから、その後ならいくらでも睨んでいいから、司をね」

ふ~ん
やっぱり主犯は…道明寺って事ね

「おい、類!な、なんで俺様なんだ。そもそもお前がちゃんとしてねぇ~のが悪いんだろ!」
「人のせいにしないでよね、司」

それにしてもあたし、一体いつから騙されていた訳?

「いいから、二人ともそこに座って。もちろん滋さんも桜子も知ってたんでしょ?お祭りコンビも逃げないで、みんなそこに座りなさい!」

「そんな怖い顔すんなよ、牧野」
「何だか司の秘書やってる時みたいだぜ」

あきら、顔が引きって、クスッ
散々的にされてきたからね、秘書バージョン牧野に

「美作さんが説明してくれるんですか?それとも西門さん?」
「いや、俺らは…な」
「俺らが知ったのは、類のパーティーの後だぜ。それまでは本当にまったく知らなかったんだ」

クククッ、二人とも牧野に睨まれてタジタジだね
女との修羅場は一番慣れてるはずなのに

「花沢類は…いつ?」

俺には優しい言い方してくれるんだ
嬉しいよ、牧野

「あきら達より後。牧野がNYに行く前の日。牧野と結婚させてやるからそれまでは連絡するなって事だけね」
「本当に最初からじゃないの?」
「あい。牧野には辛い思いはさせちゃったけど、みんな俺達を思ってしてくれた事だからね」
「うん…解ってる」
「おいおい、牧野。俺らと態度が随分違うんじゃね?」

あきら、余計な事言うとまた睨まれるよ
ほらね、クスッ

「つくし、ごめんなさい…私は最初から知ってたの」
「滋さん、そんな謝らなくっていいよ。滋さんだって辛い思いしてきたんだから、気にしないで。道明寺、どうせあんたの企みだったんでしょ!」

さっさと司が話せば秘書バージョン牧野が出る事なかったのに
いつも堂々と真ん中に座るのに、さっきから端っこで知らん顔してお酒飲んじゃってさ
お願いだからあまり牧野、怒らせないでよね

「チッ、お、お前の事を思ってやった事だ。か、感謝して欲しいくらいだ」
「ふ~ん、それじゃ~是非ともあたしがあんたに感謝したくなる程の話をして貰おうじゃない」