心の扉③-3


「牧野さん、おはよう」

ヘッ!?
か、川島部長!
いつもは車で出社されるのに、まさか電車通勤?
ありえないんだけど…

「川島部長、おはようございます。お車はどうされたんですか?」
「君が見えたらそこで降りたんだ。会社はすぐそこだけど一緒に行こう」
「あっ、はい」

フフフッ、やっぱり
川島部長も道明寺や花沢類達には及ばないけど、セレブだもんね
電車通勤なんてあり得ないか

「牧野さんはずっとNYにいたんだよね。NYで就職は考えなかったの?」
「はい…勉強をしにNYに行っていただけですので、家族も日本にいますし…」

日本へ戻って花沢物産に入る事しか考えてなかった
花沢類に会う事しか…

「良かった、花沢物産に入社してくれて」
「エッ?」
「成績優秀でMBAまで取得した人材だからね、牧野さんは」

一般庶民のあたしが花沢物産に入れたのは、楓社長と道明寺が支えてくれたお陰だから

「川島部長、朝から私を持ち上げても、仕事の量は変わりませんよ」
「ハハハッ、それは残念。秘書課へ寄るんだよね。それじゃ、後で」
「はい」

NYで勉強させてもらって、花沢物産に入る事が出来て、しかもこんな気さくな人の秘書に配属されるなんて、ホント良いことばかり

ただ一つ…花沢類の事以外は

ピピピッ!ピピピッ!

『はい、牧野です』
『受付ですが、川島部長宛ての荷物をお預かりしてますので、取りに来て頂けますか』
『はい、直ぐに行きます』

そういえば会議に必要なサンプルが朝早く受付に届く予定だったんだっけ
あ~ぁ、もう少し早ければ下にいたのにな
っていうより忘れてたあたしが悪いんだけど

「すみません。川島部長宛ての荷物を受け取りに来ました」
「あっ、こちらです…あの…牧野さん、今朝はどうして川島部長と…」

エッ!?

「いいえ、何でもないです。少し重いので、気をつけて下さいね」
「はい、ありがとうございました」

ホントだ
ちょっと重い
でも急がないと朝のミーティングに遅れちゃうよ