代償の果てに⑦-2


パーティーが始まる前に、牧野と少しゆっくり出来るかなって思ってたのに、会議中に道明寺財閥の情報が入って来て…
絶対わざとこの日を狙ったんでしょ
まったく司は…

コンコン

「牧野、ごめん。遅くな…」
「は、花沢支社長?」

これはマズイでしょ
牧野、キレイすぎ

「牧野…ごめん、抱きしめてもいい?」
「エッ!?ど、どうしたんですか…いつもなら何も言わずに強引に…キャッ」

司とNYから帰国して、5年ぶりに牧野に会った時もすっごくキレイになったって思った
でも今日の牧野はそれ以上
司が牧野をこんなにキレイにしたなんて、正直言ってメチャクチャ悔しんだけど

「は、花沢支社長…あの…」
「ごめん、あまりにも牧野が化けるの上手だから、びっくりしちゃって、クスッ」
「化けるって…お世辞でも似合うとか言うのが普通でしょうが!」

クククッ、昔の牧野になってるよ

「キレイだね、牧野」

あれれ?
今度は赤くなっちゃって
クスッ
やっぱりコロコロ表情が変わる牧野って可愛いね

「取って付けたように言われても、ちっとも嬉しくないんですけど」

相変わらず素直じゃないんだから

「牧野、愛してるよ」
「エッ!?な、何いきなり…」
「クククッ、牧野の左手貸して」

サイズ、ぴったりだね
他のアクセサリーも同じダイヤで良かった

「あの…これって…」
「ネックレスもイヤリングもしてるのに、手だけ何もしてないと変でしょ」
「で、でも…」
「時間だから、行こ」


ホントだ、もうこんな時間

待ってる間、どんどん緊張してきちゃって、どうしようって思ってたけど、花沢類と話してたら何だか気持ちが軽くなった

でもこの指輪…
ものすごく大きなダイヤがついてる
さすがは花沢類だよね
こんな高価な指輪をポンと買えちゃうんだから

「牧野、ずっと指輪見てるけど、気に入らなかった?」

気に入らない人がいるなら、見てみたいよ

「いいえ。あの…でも私なんかがつけても本当にいいのでしょうか?」
「当たり前でしょ、クスッ」
「では、お言葉に甘えてお借りします」

ぶつけたりしないように、気をつけて扱わないと
でも、どう見てもこれって婚約指輪にしか見えないよね
左手の薬指にしてるし…

「牧野、最初はマスコミのインタビューだけど、全部俺が答えるから」
「あっ、はい」

良かったぁ~
絶対に花沢類との事、色々聞かれるんじゃないかって思ってたから

「でもちょっとだけ、サービスでマスコミに微笑んでね、クスッ」

質問攻めにあうより全然いい
それ位なら喜んでやらせて頂きます!

「はい」

バシャッ!バシャッ!

うわぁ~
やっぱりスゴイ

「クスッ、みんな慌ててる」

フフッ、ホントだ
みんなビックリした顔して
マスコミの裏をかくなんて、何だか楽しい!

バシャッ!バシャッ!

「支社長ご就任、おめでとうございます」
「有難うございます」 

こんな沢山のマスコミを前に全然動じないなんて、やっぱりスゴイよね、花沢類は
そんな紳士的に受け答えしてるなんて、昔からは想像出来ないし
フフッ、昔の花沢類だったら欠伸しながら、マスコミの前をムスッとした顔して素通りしてたかもね

『眠いし、めんどくさい』

って言ってね、クスッ

「牧野さん、その左手の薬指にされているのは、もしや婚約指輪ではないですか?」

エッ!?

ヤダ…
極力、マスコミに指輪が見つからないようにしてたのに、つい花沢類の昔の事を思い出してたら笑っちゃって、手が口元に…
今日は花沢類が受け答えするって言ってたけど、あたしへの質問だから、答えないとマズイかな
花沢類…どうしよう

うわぁ~
見なきゃ良かった
そんな天使の微笑みされたら、顔が赤くなっちゃうよ

「そのお二人のご様子からして、やはりそうなんですか?おめでとうございます!」
「いつお渡しになったんですか?日本に帰国した日、花沢邸に牧野さんが行かれた日でしょか?」
「ここに来る少し前に、彼女にはめてあげました」

そうそう、さっきつけてくれたばかりだから、帰国した日は邸なんて行ってないし
やっぱりマスコミは誤解したままなのね

…って言うより
その言い方、また誤解を招く気がするんだけど

エッ!?
ななな、なに?

「牧野、ほらサービスでマスコミに微笑まなきゃ、クスッ」

も、もう!
そんな耳元で囁かなくても
はいはい、やります
やらせて頂きます

「牧野さん、お幸せそうですね!」
「ご結婚はいつですか?」

うわぁ!
タイミングが悪かった
余計に誤解しちゃったよ
もう、花沢類が変なタイミングで笑えって言うから…

「すみません、パーティーが始まりますので、これで失礼致します。牧野、行こ」

はぁ~
間違えなく、明日は婚約報道だよね…


おいおい、どうなってんだよ
あんなラブラブで現れやがって、心配して損したぜ

「やっぱり先輩って、花沢さんといると自然な感じがしますよね」

驚いてないとこ見ると、もしや桜子は知ってたのか?

「いつから知ってたんだよ。教えてくれてもいいんじゃね?お陰で昨日わざわざ元気づけるのに類んトコに行っちまったじゃねぇ~か」
「花沢さんの事ですから、この展開は予想の範囲内です」

まぁ~
本気で牧野を捕まえに帰国したんだから、類が何もしない訳はないよな

「よぉ!類のヤツ、やってくれるな。前々から決まってたんなら、俺らに言ってくれてもいいんじゃね」
「きっと花沢さん、面倒くさかっただけなんじゃないですか?」

あり得るな、類の事だから
昨日だって今まで話すの忘れたから面倒だし、明日になれば解るでしょってな感じなんだろうな

「でもよ、よく司が許したよな」

司に直接頼んでも無理だろうし、もちろん牧野にお願いしても即お断りだろうからな

「もしかして今日、何かしでかすかも知んねぇ~ぞ。類は元からだけど、司も最近じゃホント読めねぇ~行動パターンだからな」

ホント振り回される俺らの事も少しは考えて欲しいぜ

「きっと大丈夫ですよ」
「そうか?」
「えぇ、いくら先輩が好きだからって、花沢さんの大事なパーティーを壊すような事はしないと思います」

元から桜子の読みは当たる事が多いけど、何か引っ掛かかるんだよな
類と牧野が一緒に現れて、一番喜ぶはずなのに、ヤケに冷静つ~か…

「そうだといいけどな」
「まぁ~取り敢えず、中に入ろうぜ」