「陸君…これって本当の事なのかな…」
月から、数枚の紙を渡された
…ふ~ん
「月、こんな記事、気にする事ないんじゃない?いつもの事でしょ」
「でもさ、ママは今…」
「ククッ、心配なら帰ってからパパに聞いてみれば?」
「うん…」
まったく誰が、月にこんなネット記事、わざわざ印刷して渡したの
日本を離れてから、たまに憶測で記事になったりはするけど、大抵はパパや司おじさんが、事前に差し止めているのに
特にママの事は…
『道明寺司氏、花沢夫人と日本で密会!過去の愛、再燃か』
それで
ふ~ん…花沢家、道明寺家共に偽りの家族ね
ククッ
でも司おじさん可哀想
すっごくメチャクチャ書かれてる
「陸君、なに笑ってるの?笑うような記事なんてあったっけ?」
「月、ここ。司おじさん『手のつけられない猛獣のような性格』だって、クククッ」
「フフッ、陸君そんな笑ったら司おじ様に失礼だよ。でもママって凄いんだね、猛獣、プッ!猛獣だったおじ様を変えちゃうんだから」
そういえば、ママはパパと結婚する前、司おじさんと付き合ってたんだよね
前にパパの前でキスした事があるってママ、暴露してたし
ククッ、またパパに嵌められてだけど
「でも俺様な性格は変わってないんじゃない?」
「フフッ、そうかも!でもさぁ~ママって羨ましいよね、司おじ様にパパでしょ」
月の方がスゴイんじゃない?
その司おじさんの息子、翔に
名門西門家の総太
美作商事のつばさ
なかなかいないでしょ、そんなVIPから好かれてる人は
「月だったらどっちがいい?あっ、総おじさんとあきらおじさんも含めて」
「もちろんパパに決まってるじゃない!パパは月の理想の人だもん」
ククッ、みんな撃沈
パパ、良かったね
月、お願いだからその上目遣い止めてくれない?
僕だって聞きづらいのに…
「ねぇ~陸君…」
もう解ったから
まったく月は///
「パパ」
「ん?」
「あのね、これなんだけど…え~と僕じゃなくて…月がね」
って、パパなんでママが噂になってるのに、そんなに余裕なの?
「クククッ、陸、月よくこの写真見てごらん」
記事と一緒に載ってる写真?
ん~どこかの地下駐車場で
記事には某ホテル地下駐車場って書いてあるけど…
泣いているママの頭を、司おじさんが優しそうな顔で撫でている
この司おじさんの顔は…激レア
記事と合わせて見ると、疑われてもしかたないかも
「ククッ、陸なら解ると思ったけど、月はどう?」
「う~ん、ホテルの駐車場って書いてあるけど、絶対に病院の駐車場だと思う」
3日前、牧野のお祖母ちゃんが交通事故にあったって連絡が来て、ママが急遽、日本へ帰ったんだよね
足は骨折してるけど、命に別状なくてホント良かった
「さっきママから電話があって、その写真は病院の駐車場だって言ってたよ。ククッ、でも不正解」
この写真を見て、ママと司おじさんの事になると、いつもムッとしてるパパが、平気な顔してるんだから
う~ん…
何かあるはずなんだけど…
あ…
「陸、解ったみたいだね。月に教えてあげて」
「月、ここ。司おじさんの後ろ、下の方に女の人の靴だけが写ってる」
おそらく、滋おばさんの靴
「ククッ、上手く撮ったつもりみたいだけどね」
たまたま日本に、司おじさんと滋おばさんが帰国してて、事故の話を聞いて駆けつけて来てくれたみたい
事故からなかなか目が覚めない、牧野お祖母ちゃんを心配して不安になって泣いている所を今回撮られたらしい
でも珍しいよね、ママの事なのに、事前に解らなかったのかな
「パパ、今回なんでネットに流れちゃったの?」
「海外のサーバーをいくつも経由してて、司も解らなかったらしいよ。牧野ママの事故もひき逃げだったから、今調べてる最中」
近くのスーパーで、ウナギが特売してるからと、たまたまSPをつけずに外出した時だったみたい
クククッ、なんか牧野お祖母ちゃんらしい
牧野お祖父ちゃんも、マンションの管理人してるし、一緒に住んでる進おじさんは、花沢物産でバリバリの秘書をやってるし
パパ曰く、進おじさんはママより優秀らしい
今はそんなに、切り詰めなくても大丈夫なのにね
「今日パパの仕事が一段落したから、明日学校が終わったら日本に行くよ」
「ホントに!良かったぁ~月、大丈夫だって言われてもやっぱり牧野お祖母ちゃんの顔みないと心配だったから」
いつも元気な牧野お祖母ちゃんが、おとなしくベットに寝てるなんて想像出来ないけど
僕も顔を見ないと、なんか落ち着かなかったんだよね
「翔やつばさも週末だから日本に来るって」
っていう事は…
でも今回は、お見舞いなんだからそんな事ない…よね
「みんな来るんだ、嬉しい!ってもしかして、パパ」
「そ、撮影もかねてね。クククッ、陸、頑張って」
はぁ~やっぱり…
パパってば、そんなに笑わなくたっていいでしょ
ホント、いつまでやらせるのかな
もういい加減、止めて欲しいんだけど