~空港~
プルルル プルルル
ピッ
『牧野でございます。…はい…はい……』
「なぁ~類…やっぱり司の秘書って…」
「そうみたいだね」
「おい、類!解ってんのか?つ~事は牧野は司の愛人って事だぜ」
そんな事、総二郎に言われなくても解ってる…
「おう、お前ら久しぶりだな!」
「「あぁ…」」
「司、久しぶり」
「おぉ、類、フランスから帰ってたのか」
「うん、昨日ね」
『…はい…畏まりました。それでは後程』
ピッ!
ククッ
牧野、ちゃんと秘書してるんだ
「「牧野!」」
「西門様、美作部長、お久しぶりでございます」
ふ~ん
もしかして牧野、仕事モードって事?
「ま~きの、久しぶり」
「花沢専務もお久しぶりでございます」
顔色一つ変えないんだね
昔はコロコロ表情が変わったのに
さすがあの鉄の女に鍛えられただけあるね
「おい、牧野!なんだよ、そんな他人行儀な言い方…」
「道明寺支社長、申し訳ございませんが、先方がお待ちでございます。お急ぎ頂けますか?」
クククッ
あきら、無視されてる
「あぁ、解った。悪り~な、行くわ。明日のパーティーでな」
「なっ…おい、司!」
司、ホント変わらないね、俺様なとこ
「つ~かよ、牧野、どうしちまったんだ?あいつから西門様なんて言われるとは思わなかったぜ」
「まさかずっとあの調子じゃねぇ~よな?」
可能性はあるよね
司や鉄の女の指示だったら
5年間
俺達にさえ隠し続けてきたんだから
「おい、牧野。そんな慌てて戻る事もねぇ~だろ。フッ、類と会って動揺しちまったのか。スケジュールは、そんなに詰まってなかったはずだしな」
「空港に到着してすぐ、楓社長よりお電話がございまして、すぐに東京支社へ来るようにとのご指示です」
上手いタイミングだったな、牧野
俺様はもう少し楽しみたかったのにな
「ババァのヤツ、何の用だ?明日の打ち合わせならNYで済んでんだろ」
「滋様がお客様と支社の方にお見えだそうです」
チッ!
仕方ねぇ~な…
「なぁ~牧野、お前はこの後どうすんだ?」
「明日の最終チェック後、楓社長より本日は帰社するようにと」
「久しぶりにお前の手料理が食いて~な。用意しとけ、後で電話する」
「はい、畏まりました」
フッ、そんなに類が好きか
本当に忠実だな、牧野
「もう着くな。牧野は降りなくていい、そのままメープルホテルに乗って行け。じゃ~な、後でお前の家に行くから」
「はい…」
いつかは日本へ戻るとは思ってたけど、こんなに早くなんて
花沢類…
フランスにいるって聞いていたのに
変わらないね
あの微笑みも、ビー玉の瞳も
あの頃のまま…
「牧野様、メープルホテルに着きましたが」
「あっ、すみません、ボォ~としてて。ありがとうございました」
メープルホテル
明日は道明寺の支社長就任パーティー
もう後戻りは出来ない
この現実が、あたしがした道明寺への代償なんだから
そしてあたしが選んだ道なんだから…
「明日、花沢類の1日をあたしに頂戴!」
あの時…
道明寺からの手紙を読んで、咄嗟に出た言葉
たった1日だけでも思い出が欲しかった
そうしたらきっとあたしはやっていけるから…
~5年前~
「どうしたの急に?司、何か言ってきたの?」
「ううん。ただの…特待生合格おめでとうだって!ホント何でもすぐ解っちゃうんだね、道明寺ってさ」
そう、あたしの心の中まで…
「ふ~ん」
って花沢類、そんな覗き込まなくても…か、顔近いから///
「ククッ、牧野可愛い。じゃ~明日、朝迎えに来るね」
いつものように、あたしの頭をクシャっとして微笑むと、あたしが部屋に入るまで見送ってくれる
これも今日で最後…
部屋に入り、気持ちを落ち着かせる為にお茶を入れ
もう一度、道明寺からの手紙を読み返す
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お前の気持ちは知っている
解っているよな、牧野
これから
どうすればいいか
断ったらどうなるか
1日だけやる
俺様からのプレゼントだ
せいぜい類と楽しむんだな
明後日、西田を行かせる
牧野、お前に会えるのを楽しみにしてるぜ
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あたしは…
あたしの為にNYで一人頑張っている道明寺を裏切り、傷つけてしまった…
きっと断れば道明寺は花沢類に…
あたしのせいで、花沢類を巻き込む事なんて出来ない