心の扉⑤-1


「いつからここに住んでるの?」
「フフフッ、数日前から」

会社から数分の所に引越してくるなんて四六時中監視されてるみたいなんだけど

「東京にも大きな邸があるのにわざわざマンションに住む事ないでしょ」
「えぇ、そうなんですけど…料理が冷めてしまうから詳しいお話はお部屋に行ってからにしましょう」

まぁ~聞かなくても想像はつくけど
俺に少しでも時間が空いたら、すぐに会いに来れる距離だからね
そんなに会いたい?
結婚すれば嫌でも毎日顔を会わせるのに

「類さん、どうぞ。ここの部屋、夜景がとてもキレイでしょ?この夜景が気に入ってここに住みたくなっちゃたの」

都心の高層マンションならどこでも同じだと思うけど…あれ!?
あの黄色い…確か玉子焼き

「嫌だわ。やっぱり目に付いちゃいました?」
「自分で作ったの?」
「えぇ、一つくらい自分が作ったものを類さんに食べて頂きたくて…あの…でも見た目もなんですけど、味も自信がなくて…」

クスッ、確かに見た目はね
でも何で玉子焼きなんだろう
ワインに合うような、もっと簡単なものにすれば良かったのに

「せっかく作ってくれたんだし食べよ」
「あっ、はい」

見た目は悪いけど、味は美味しい
きっと他の料理を作ったシェフに教わって味付けしたからだろうね

「美味しい」
「本当に?フフッ、良かった!今度は見た目もキレイに出来るように練習しなくっちゃ」

クククッ
牧野みたいな玉子焼きが作れるようになるには、かなりかかりそうだけどね

「でもガッツポーズして気合いを入れなくても、クスッ」
「エッ…あっ、そうよね///」

玉子焼きといい、仕草といい、ホントこの人って牧野を思い出させる

そういえば牧野はいつ帰国するんだろう
司はギリギリまでNYだろうし、司と牧野がバラバラに帰国なんてありえないから、パーティー当日か前日の夜って感じか
牧野はパパやママ達とゆっくりしたいだろうし、少しでも早く帰りたいんじゃないかな
なんか司とケンカしてそうな気がする、クククッ

「類さん、そんなに何度も笑わなくても///」
「ごめん、思い出しちゃって。ワイン飲も」
「えぇ…はい」

牧野に会いたい
こうして牧野を思い出す度にものすごく会いたくなる
もし牧野が今ここにいたら、きっと婚約破棄してるかも

クククッ
五年前に諦めたはずなのにね

…あれ? 

なんかスッゴく…眠い

そう…いえば…
昨日殆ど…寝て…な……