もしや耳元で囁いてたのって
「明日もあの男に会いにここに来るのか?」
「ちょっと先輩のマネして、仕事から帰って来るまでにお部屋に食事用意して待ってますねって言ったんで、一応来ますけど」
一応?
桜子が料理すんのか!?
出来るのかよ
「勘違いしてません?私の目的はこのマンションに潜入する事ですから、食事なんて作る訳ないじゃないですか。あの人の食事は使用人にやってもらって、急用が出来たっていうメモを残しておきます」
そうだよな
桜子が料理なんてする訳ねぇ~よな
「でも桜子のエプロン姿は似合うかもな」
「なに想像してるんですか。それより、さっきはありがとうございました。思ってたよりしつこい人だったんで助かりました」
桜子みたいな女だったら、誰でも手に入れたいだろうからな、仕方ねぇ~な
「類が…類が桜子、ちゃんと見ててやれって言ってたからな」
「花沢さんが?」
昔から類が言う事は何故か良く当たるんだよな
「あぁ、でも言われなくても、そうしてるけど」
「エッ!?もしかして美作さん、私にストーカーしてたんですか」
「おいおい、助けてやったのにストーカーはねぇ~だろ」
俺も一応、F4だぜ
それにこんなカッコいいストーカーなんていねぇ~だろ、普通
「フフッ、冗談ですよ。お礼に私が奢りますから、美作さん何処かに飲みに行きません?」
「そうだな、明日の桜子の作戦も聞きたいからな」
先輩がNYに行ってる時だけ滋さんが来ているのだとすれば、今日しかチャンスはない
エレベーターはVIP専用と分かれてるのだろうけど、駐車場の入口は一緒のはずだから
でももしかするとVIP専用のスペースがあるかもしれないって昨日、美作さんが言ってたけど…
あ~やっぱり…
あそこに入られる前に車を停めないといけない
とにかくこんな状態、滋さんだって嫌だろうし、私に何か出来るなら
滋さんに本当の事を話してもらいたい
………来た
キキィ~!
バン!
「さ、三条様、こんな所で何をなさって…」
滋さん、今さら隠れても遅いですよ
バッチリ乗ってるのは見ましたから
コンコン
ガシャ
「滋さん、私にまで隠れなくてもいいんじゃないですか?それともこのマンションに来てるのが知れると何かマズイ事でも?」
「ハハハッ…さ、桜子…え~と、ちょっと待ってくれる?」
どこに連絡してるんですか?
道明寺さんなら…
『あっ、司、仕事中にごめん…あ、あのさ、今マンションの駐車場なんだけど…』
私が話しますから
「滋さん、貸して下さい」
「あっ、桜子…」
『道明寺さん、三条です。今日は滋さんに色々お聞きしたくてマンションの駐車場でお待ちしておりました』
『フッ、さすがは桜子だな。解った、今日は早く帰るから部屋で待ってろ。滋にもそう言っとけ』
『解りました。では、お待ちしております』
「道明寺さん、今日は早く帰るそうですよ。滋さん、お部屋に行きましょうか」
「う、うん…ハハハッ、やっぱり桜子ってスゴいね!桜子、こっち。直通のエレベーターだから」
チン!
「はい、どうぞ」
ふ~ん
何となく話を聞かなくても、想像出来るんですけどね
「それでは後の事はよろしくお願いします」
「はい…しかし出来ればもう少しいて頂けると…」
そんな事言ってたら、いつまでも自分の仕事として、責任が持てないでしょ
まぁ~
俺も予定よりまた更に早く帰国するようにしちゃったのがいけないんだけどね
「部長でしたら大丈夫です。もし俺が必要な時は、連絡して下されば、対処なりアドバイスなりしますので。こちらの都合で、部長にはご迷惑お掛けしてすみません」
こういう風に言われると、ククッ、引き留められなくなるよね
でも正直、部長が優秀だから早く帰国出来るんだけど
「いいえ、こちらこそ、ご迷惑お掛けしないように、私なりに精一杯やってみます」
「ありがとうございます。それでは」
「お気をつけて」
父さんもフランスに戻って来てるし、帰国の話をしても何も言ってこなかったから、きっと大丈夫でしょ
コンコン
「類です」
「どうぞ」
クククッ、書類の山だね
父さん、のんびり日本にいたのがいけないんじゃない?
「お忙しいとこ、すみません。日本へ今から帰国しますので、一応挨拶をと思いまして」
「あぁ、今日だったか。就任パーティーには私も日本へ行くからな」
今度はのんびり出来ないと思うけどね
俺がフランスにいないから
「はい、それでは」
「待て、類。日本に行って早々で悪いが例の大規模開発の計画が水面下で決まりそうなんだが…」
「もう既に手配済みです」
「おぉ、そうか。しかしお前も忙しかったのに、フランスにいながら日本まで動かしてるとは…随分と優秀になったもんだ」
当たり前でしょ
牧野を手に入れる為に努力してきたんだから
「まだまだこれからです」
「フッ、そうだな、日本には司君がいるからな」
「はい。すみません、飛行機の時間がありますので、これで失礼致します」
「あぁ、期待してるぞ、類」
公私共に期待してて、クスッ