代償の果てに⑤-3


到着が予定より大分遅れたけど、後5分か…
良かった、間に合って

「それじゃ~後の事はよろしく」
「はい、畏まりました。花沢支社長、お車は正面出入口に待機しております。支社長就任でマスコミがいつもより多いので、お気をつけ下さい」
「解った、ありがと」

こっちの便は定刻通り
またビックリする顔が見れるかも、クスッ
おそらく後一週間は帰国しないと思ってるからね

あっ、来た
ん~あれは仕事モードの顔だね、クククッ

「ま~きの」

プッ!
キョロキョロするから目の前にいるのに、気がつかないんでしょ
まったく、可愛いんだから

「牧野、お帰り」
「キャ!は、花沢類!?ど、どうしてココに…あっ、…ん…んんん…」

五年ぶりだね、花沢類って呼んでくれたの

「牧野、時間もったいないから行こ」
「行こって…は、花沢専務、何をおっしゃってるんですか!私はこれから会社へ戻りますので、手を離して下さい」

あ~ぁ、戻っちゃった、仕事モードに

「一応、日本に帰国と同時に支社長になったんだけど、クスッ」
「し、失礼致しました。それでは改めて、花沢支社長、手を離して頂けませんか?」

そんなにイヤ?
俺と手を繋ぐの…
でもさ、牧野、顔真っ赤だよ
もしかして抱き締めたからかな、それとも、クスッ、キスしたからとか

「クククッ、大丈夫。パーティーの打合せをするからって、司の母ちゃんには昨日連絡しておいたから」
「エッ!?楓社長、昨日は何にも…それに道明寺…」
「心配しなくても、司には伝えておくってさ。ほら、行こ」
「そんな勝手に…に、荷物取りに行かないと…だからあの…手を…」

まったく、牧野は
何度言ったって、俺が離すわけないでしょ


はぁ~
きっとあたし、顔真っ赤なんだろうな
まさか花沢類がいるなんて思ってもみなかったから、仮面が被れなくて…
しかもいきなり抱擁に…
キ、キス///

う、嬉しいんだけど…ってあたしったら何考えてんだか

「荷物は秘書に言ってあるから大丈夫。牧野、グズグズしてないで行くよ」

あっ、待って
花沢類が帰国って事は、そのまま出たら…

バシャッ、バシャッ!

ひゃ~眩しい
ど、どうすんのよ
マスコミの前に手なんか繋いで現れたら…
はぁ~今度は道明寺に何て言い訳すれば…
ああん、もう!
どうにでもなれって感じ

「支社長就任、おめでとうございます!」
「やはり噂は本当だったんですね、花沢支社長!NYまで彼女をお迎えに行かれてから帰国ですか?」

なっ、そんな事あるわけないでしょうが!
マスコミも調べれば解るでしょ
っていうか、花沢類
何でマスコミに天使の微笑みしてるの?
そんな顔したら誤解するじゃない…もう!

ひゃ!
な、なに耳元で…

「牧野、そんなムスッとしてたら可愛い顔が台無しだよ、クスッ」

は、花沢類が悪いんじゃない///

バシャッ!バシャッ!

「クククッ、面白い」

まったく…

はぁ~きっと明日は写真付であらゆる事、書かれるんだろうな
見ないわけないよね、道明寺

「牧野、なにボォ~としてるの?はい、車に乗って」

あっ、車ね…
ってドコ行くの!?

「は、花沢支社長、あの…」
「いいから、早く乗って。マスコミ煩いから」

あっ、もう…
何だか花沢類に会う度に、振り回されてる気がするんだけど
車に乗っても手は離さないし、花沢類ったら、澄ました顔しちゃって
あたしは日本に到着してからドキドキしっぱなしなのにさ

でもホントどこに行くんだろう…

「あの…花沢支社長、これからどちらに行かれるんですか?」
「ここから一番近いホテル」

ヘッ?
ホ、ホテル!

「な、何を…」
「クククッ、何もしないから安心して」

何もしないって…
だったら何でホテルなんか行くのよ
別に行かなくてもいいでしょ

「あれ、牧野疑ってるの?」
「理由もなく、誤解を招くような所には行きません。降ろして下さい」

例え何もなくても、これ以上マスコミに色々書かれたら…

「ふ~ん、理由があればいいんだ。だったら大丈夫でしょ、パーティーの打合せをするだけだから。もちろんお茶しながらだけどね、クスッ」

パーティーの打合せでわざわざ…
でも仕方ないのかな、花沢類も忙しいだろうし

「…解りました」
「これ以上騒ぎになると、クスッ、牧野が可哀想だから、レストランのVIPルームにしておいたからね」

お気遣いありがとう
でもさ、もっと前にも気遣ってくれればいいのに…
そ、それだし、また何で手を繋いだままなのかな、花沢類
レストランに入るまで注目されっぱなしなんですけど
女の人の目線がメチャクチャ痛いよ…

別に疑ってたわけじゃないけど、本当に打合せだったんだ
それにしてもスゴイ招待客の数だよね

でも良かった
西田さんに言われて、NYにいる間も日本企業の社長や重役の方の顔や名前とか頭にインプットしてかたから
もう一度見直さなきゃダメだけどね

「ねぇ~牧野」
「は、はい」
「さっきから携帯鳴ってない?ブルブル聞こえるけど」

携帯?
ヤダ、全然気がつかなかった
ゲッ!着信履歴、道明寺ばっかり…

「もしかして司が何回も掛けてたりして、クスッ」

よ、よくお解かりで…

「牧野、携帯かして」

エッ?
あっ…

ブルルルル ブルルルル

「また司からだよ」

ちょ、ちょっと、花沢類

ピッ!

『牧野!お前、何で電話出ねぇ~んだよ!』
『クククッ、俺といるからでしょ』
『あ?類、てめぇ~何マスコミ騒がせてんだよ!つ~か、何で牧野の携帯に勝手に出てんだ!』
『司、うるさい。今日は打合せなんだから、邪魔しないで』

ピッ!

「はい、牧野」

はい、ありがとうって、どうすんのよ…

ブルルルル ブルルルル

「クスッ、電源切っとけば?会社は俺と一緒だって解ってるんだから、急用なら俺に連絡来るでしょ」

そうだよね…
ご、ごめん、切るね、道明寺
もうちょっと頭で整理してからじゃないと、今はあんたに立ち向かえないからさ