すれ違い 後編4


花沢類がいるフランスに来たけど、今回は花沢類に会う事はない

約四年間、あらゆる教養を教わり、MBAの取得をほぼ確実にした

そして最終関門は…
花沢物産の就職試験

道明寺のお母さんが言うように、ここで失敗する訳にはいかない

「牧野つくしと申します。本日…」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

ヘッ!?
あたし、名前しか言ってないのに…

日本のように試験会場はこちらへとか、みんな一斉にとかはないだろうなとは思ってたけど…

で、でもさ、何で重役専用みたいな豪華なエレベーターに乗せられるわけ?
まさか重役の人が面接してくれるとか…

「牧野様、どうぞこちらへ」

うわぁ~
またまた物凄く豪華なフロアーで…
花沢物産って造りが贅沢なんだね

コンコン

「牧野つくし様をお連れ致しました」
「どうぞ」

よし、頑張る!

「失礼致します。牧野つくしです。本日は宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願いします。まずはお掛け下さい」
「はい、失礼致します」

なんでこんな豪華なソファーに?

それに…
あたしの目の前にいるこの人
花沢類に似てる…ってもしや花沢類のお父さん!?
という事は花沢社長…だよね

「ハハハッ、牧野さん、あなたのお考え通り、私は類の父親でここ花沢物産の社長です。あなたの事は楓さんから聞いてましたが、本当に聞いていた通りの方だ、クククッ」

そ、そんな、笑わなくても…

それに道明寺のお母さん、あたしの事なんて説明したんだろう
こんなに笑われて…
でも笑い方まで花沢類にそっくり

「ククッ、悪かったね。では本題に入ろうか」



半年前にいきなり社長室に呼び出されて、父さんから日本支社へ行くように言われたけど、丁度良かったかも

自分に自信が持てたのもあるけど、あまり長すぎて司と牧野が結婚しちゃったら元も子もないからね

「花沢専務、今日のスケジュールはこれで終了ですが、会社へお戻りになりますか?それともご自宅へ向かわれますか?」

へぇ~珍しい
こんなに早く帰れるんだ

「じゃ~家に帰る」
「畏まりました。それからご報告ですが、明日より花沢専務の秘書が一人増えますので」

フランスには後1週間しかいないのに、今さら秘書なんて必要ないんじゃない?
その人も日本へ連れてくかな
なんか可哀そ、就任早々転勤なんて
でもそんなのどうでもいいけどね

「ふ~ん」
「では、花沢専務、お久しぶりなのでごゆっくりなさって下さい」

フランスに来てから、休日も殆ど取らずに、ましてや早く帰るなんて滅多になかったから
ホント久しぶりにゆっくりできるかも

「じゃ~ね、後の事はよろしく」


ふ~ん、このマンションに東洋人なんて住んでたんだ
いつも朝早く出かけて、夜中に帰って来るから気がつかなかった

後姿が牧野に似てるかも
でも、クククッ、誰でも牧野に見えちゃうなんて、俺ってホント牧野に相当惚れてるよね

…ま…きの?